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製薬企業から医師への謝礼額公開、産学連携の実態周知を [お茶の水だより]

No.4715 (2014年09月06日発行) P.12

登録日: 2014-09-06

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▼製薬企業が医師に支払った謝礼の金額が、医師の個人名とともに公開される?。そんな制度がこのほど、本格的に始動した。ファイザーなど6社は先月、2013年度に医師らに支払った原稿執筆料や研究会講師の謝礼等の金額を公表した。
▼このうち金額の合計が最も高かったのは武田薬品工業の約19億336万円。次いで第一三共が約17億2497万円、エーザイが約12億3000万円、ファイザーが約10億8788万円、中外製薬が約10億7208万円となっており、最も低いアステラス製薬が約10億3300万円だった。プライバシーへの配慮から、いずれの企業も氏名など個人情報を登録した者だけが医師個人別の件数や受け取り金額を記載したリストを閲覧できる仕組みとなっている。
▼これは日本製薬工業協会(製薬協)が利益相反マネジメントのため11年1月に策定した「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」に基づくもの。施行を前に医学界から慎重論が出たため、実施が1年延期された経緯がある。製薬協の会員会社は今後、順次情報を公開する予定だ。
▼ガイドラインの目的は医師と製薬企業との関係の透明性を社会に示すことに他ならない。奇しくもガイドライン策定以降、臨床研究を巡る問題が次々と明るみになり、社会が医師や製薬企業に向ける眼差しは厳しいものとなった。医師には「釈迦に説法」だが、データは解釈が重要であり、今後、公開された数字が独り歩きする危険性もある。ファイザーを例にとると、10億円超という数字は一見巨額だが、これは医師約6300人に対する年間支払いの合計で、1人当たりでは年17万円程度に過ぎない。
▼一部報道ではファイザーが公開した謝礼額について「1人で30件以上、計500万円を超える医師もいた」と問題視している。謝礼は講演や原稿執筆を行い、医学の発展に貢献したことへの対価だ。本誌4627号の巻頭コラム「プラタナス」で、日本糖尿病学会の利益相反委員会委員長を務めた加来浩平氏は、医師らにとって「企業主催の講演会といえども医療水準の向上に果たす役割は大きい」と指摘している。
▼産学間の健全な産学連携が阻害されることのないよう、製薬業界や医学界はこうした実態について周知し、社会に理解を求める必要がある。さらには本当に個人別の謝礼額まで公開すべきかも引き続き議論が必要だ。これらの課題が解決された上で、利益相反の透明化が進むことを期待したい。

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