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創薬促進と医療保険財政の両立を [お茶の水だより]

No.4778 (2015年11月21日発行) P.12

登録日: 2015-11-21

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▼薬価制度改革を巡る議論が活発化している。「市場拡大再算定」は、原価計算方式により薬価算定された既収載品、または適応拡大など使用実態が著しく変化した既収載品を対象に薬価を引き下げる仕組みで、「年間販売額150億円以上、収載時予想販売額の2倍以上」という基準がある。しかし予想販売額が高額な場合は適用されにくく、年間販売額が「巨額な品目」を基準に加える方向で検討が進んでいる。
▼今年8月に薬価収載されたC型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」は1日薬価が8万171円となった。高薬価となったのは13年ぶりに「画期性加算」が適用された「ソバルディ錠」を類似薬としたことに加え、問題視された1日薬価の算定方式によるところが大きい。予想販売額は1190億円で、「巨額な品目」に該当する可能性がある。不合理な算定方式は改められるべきだが、画期的な医薬品の開発メリットをどう評価するのかは慎重な議論が必要だ。
▼政府は「骨太方針2015」で、「医薬品産業の国際競争力強化に向けた必要な措置を検討する」と明記した。しかし、有用な新薬を創出しても市場規模が拡大した結果、数年で薬価を引き下げられたのでは企業の創薬モチベーションは上がらない。2010年度改定から試行導入された「新薬創出等加算」の対象品目数は1位ファイザー、2位グラクソ・スミスクラインと外資が優勢だ。国内製薬企業の創薬を促進するためには、当面は加算の継続が妥当ではないか。
▼厳しい医療保険財政下で創薬を促進するには、例えば現在検討が進んでいる後発医薬品の価格帯をまとめ、引き下げる手法も有効だ。そこで得た原資を、新薬の加算として充当する。もはや打ち出の小槌がない以上、薬価制度全体を見通した上で不合理なルールを洗い出し、改善していく必要があるだろう。

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