▼免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの高額な薬価が議論を呼んでいる。2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」に承認後、昨年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に適応が拡大されたことで対象患者が増加。医療保険財政に大きなインパクトを与えることになり、先月には財務省の財政制度分科会で議題となった。非小細胞肺癌の場合、年間医療費は1人約3500万円、対象患者5万人使用で1兆7500億円との試算が示され、“国家財政の破滅”の可能性まで指摘された。
▼この問題に対し、日本医師会は薬事承認の段階で薬価や対象患者数を議論する制度改正を提言。診療ガイドラインに医療経済の視点を盛り込むことも各学会に呼び掛けた。そして、中央社会保険医療協議会でも薬価制度見直しの検討が始まった。
▼ニボルマブは米国で昨年11月に腎癌に承認されており、日本でも現在、承認申請が行われている。そのため、先月仙台市で開催された日本泌尿器科学会総会では、免疫チェックポイント阻害剤に関する講演が複数企画された。ここでも医療経済の視点が話題となり、演者は共通して、「効果予測のバイオマーカーの早期確立が必要」と強調した。有効率は20~30%だが、現状では事前に有効な集団を特定できず、医師たちを悩ませる。
▼癌は日本人の2人に1人が罹患する国民病である。そして、免疫チェックポイント阻害剤は他の多くの癌種でも臨床試験が進行している。例えば既存薬を使い切った症例に用いるなど、どのような治療アルゴリズムとすべきなのか。年齢で投与対象に制限を設けることの議論がありうるのか―。超高額医薬品の登場は、医療界のみならず社会全体で考えるべき重い課題を投げかけている。