日本医療政策機構(黒川清代表理事)は13日、薬剤費抑制に向けた手法として、高額薬剤の薬価の引下げだけではなく、保険の適用範囲や適正処方の推進を含めた検討が必要とする提言を取りまとめた。これは同機構が9日に開いた薬価制度改革を考える緊急フォーラムでの議論を踏まえたもの。
9日のパネルディスカッションでは、医療経済学が専門の五十嵐中氏(写真右、東大)が薬価について、「たくさん売れたから安くするというのは医療経済学とは言えない」と指摘。費用対効果の視点が重要だとして、英国など世界で標準的に用いられている「質調整生存年QALY」(用語解説)を紹介した。その上で、「費用対効果はある程度は使える軸だが、すべてが計れるわけではない」として、複合的な要素を慎重に考慮する必要性を示した。
平手晴彦氏(写真左、武田薬品工業)は、「日本の国家戦略として、重要度が低いと判断された薬剤を削減し、革新的な薬剤は守るといった姿勢がないと医薬品業界は成り立たない」と強調。「高所得の患者負担増加や、風邪薬の保険適用除外化など、イノベーションを阻害しない道筋が必要」と訴えた。
フロアの医師からは「現場の医師が価格で薬を選ぶことはないが、使用する患者や時期、順番を判断すべき」との意見が上がり、ガイドラインに沿った適正処方が求められるとの認識で一致した。