エーザイの内藤晴夫CEO(写真)は3月9日に開いた記者懇談会で、「認知症の創薬パラダイムは大きく拡がりつつある」として、次世代アルツハイマー病(AD)治療薬開発への意気込みを改めて示した。
内藤CEOは、認知症の新パラダイムとして①経時的症状変容(睡眠障害→行動障害→認知障害)、②脳の維持システム(遺伝子的背景、環境因子、防御機構)、③攻撃因子の重積過程(アミロイドβ→タウ→反応性グリア細胞)─の3つの基軸を挙げ、これらをカバーすべく現在10の候補品の開発を進めていると説明。
その上で、次世代AD治療薬は既存のAD治療薬と異なり、より早期かつ長期間にわたって病勢ステージの進行を抑制することから、「次世代AD治療薬の価格は、その増大する価値を反映して設定すべき」との考えを示した。
内藤CEOはさらに、「認知症にかかる費用構造から社会的費用、家族の負担についての官民による対策が重要」と述べ、がん対策基本法のような総合的な指針を盛り込んだ法律の制定や認知症研究への公的ファンディングのさらなる充実、公的枠組みでの認知症検診の実現などを国に求めていく考えを示した。
●認知症領域でエーザイが開発中の主な新薬
【フェーズⅢ】Aducanumab(抗Aβ抗体)、Elenbecestat(BACE阻害剤) 【フェーズⅡ(準備中を含む)】Lemborexant(オレキシン受容体拮抗剤)、BAN2401(抗Aβプロトフィブリル抗体)、E2027(PDE9阻害剤)
日本イーライリリーのパトリック・ジョンソン社長(写真)は3月15日の記者会見で、同社の2016年売上高は2432億円で、ジェネリック参入や薬価改定の影響を受けながらも前年比3.1%増の成長率を達成したと発表した。
売上を牽引したのは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬「サインバルタ」(36.6%増)、抗がん剤「サイラムザ」(314.2%増)、GLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(1690.3%増)、SGLT2阻害薬「ジャディアンス」(813.0%増)などの新製品や適応拡大製品。
ジョンソン社長は、日本で既に上市済みの5製品を含め「グローバル全体で2014年から2023年までの10年間で20の新製品の承認を目指す」方針を改めて表明。同席した藤本利夫副社長は、現在承認申請中の関節リウマチ治療薬バリシチニブをはじめ新薬の世界同時開発を順調に進めていることを強調した。
藤本副社長は、軽度アルツハイマー型認知症に対するソラネズマブの開発は、臨床試験で有効な結果が得られなかったことから断念したと説明。ただ、より早期の患者を対象とした複数の試験をアカデミアとの共同開発で進めるなど認知症の新薬開発は継続していると述べた。
●2016年に承認・適応追加された日本イーライリリーの新薬
①「サインバルタカプセル」(慢性腰痛、変形性関節症に伴う疼痛に対する適応追加) ②「サイラムザ」(進行・再発の結腸・直腸癌、進行・再発の非小細胞肺癌に対する適応追加) ③「トルツ」(承認取得/発売)