▶薬価制度の抜本改革に向けた議論が中央社会保険医療協議会で着々と進んでいる。論点の1つが、通常の薬価改定の中間年に実施する薬価改定のあり方だ。政府が昨年12月に改革の方向性を示した「基本方針」では、「価格乖離の大きな品目」を対象とする方針が打ち出されており、具体的内容について年内には結論をまとめる。
▶「価格乖離」とは何を指すか。素直に読めば、通常の薬価改定で指標となっている「乖離率」だろう。乖離率を指す場合、中間年改定の対象は、生活習慣病薬など類似品が多数存在し、価格競争の激しい長期収載品や後発医薬品が中心になる。
▶一方「乖離額」と捉えれば、乖離率が小さい傾向にある高額医薬品も改定の対象に浮上する。現行ルールにおいて新薬創出加算品目は、研究開発投資の早期回収のため薬価の引下げを一時的に猶予されているが、基本方針では費用対効果評価の本格導入で真に有効な新薬を見極めるとしている。新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度についてはゼロベースでの見直しを求めており、仮に同制度がなくなれば、乖離額が大きいとどこで線引きするかにもよるが、対象が拡大することは確実だ。
▶今回の抜本改革は、オプジーボなど高額医薬品が与える財政影響への懸念が端緒となった。基本方針は「国民負担の軽減」を目的に掲げているが、
真の狙いが増え続ける薬剤費の削減にあることは明白だ。長期収載品や後発医薬品の薬価を引き下げても、財政効果はあまり期待できない。予算編成過程で改定財源を薬価からどれだけ捻り出すかという政治的判断にもよるが、製薬業界にとって最悪の「乖離率」「乖離額」の両者適用、とのシナリオが展開される可能性もある。