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薬のネット販売解禁の経緯と憲法論議について【OPINION】

No.4689 (2014年03月08日発行) P.13

岡田裕二 (衆議院議員政策担当秘書)

登録日: 2014-04-08

最終更新日: 2017-08-14

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  • 薬のネット販売解禁の背景と経緯

    今から遡ること8年余の2006年、一般用医薬品の販売制度を見直し、医薬品の販売に関する各種規定の整備を図るとともに、新たに指定薬物の製造、輸入、販売等を禁止すること等を主な内容とする、薬事法の一部改正法が成立した。

    これにより、一般用医薬品制度はリスクの程度に応じて第1類医薬品から第3類医薬品まで区分し、その区分に応じて専門家が関与し、適正使用のための必要な情報提供等を行う仕組みとなった。

    同法の全面施行を2009年6月1日に控え、厚労省は、薬事法施行規則を改正し、原則として第3類医薬品以外の医薬品の通信販売を禁止した。しかし同年5月25日、この省令は営業の自由を保障した憲法に違反するとして、ケンコーコム株式会社をはじめとする一般用医薬品の通信販売事業者らは、国を相手に、第3類医薬品以外の医薬品についての通信販売等を行う権利の確認と、それらを禁止する部分の省令の無効確認を求める行政訴訟を提起した。

    2013年1月11日、最高裁判所は、薬事法施行規則のうち第3類医薬品以外の医薬品について、通信販売を禁止する等の規定は2006年の改正後の薬事法の趣旨に適合するものではなく、改正後の薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である旨の判決を出した。この判決を受け、厚労省は、新たな一般用医薬品の販売ルールの検討を開始することとなった。

    厚労省対官邸

    最高裁判決が出た1月後の2013年2月14日、厚労省は「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」(座長:遠藤久夫学習院大学経済学部長)を設置。

    一方で、政府の規制改革会議では、成長戦略を議論していた産業競争力会議と連携しながら、一般用医薬品のインターネット販売規制を特に緊急性、重要性の高い最優先案件として議論を重ね、同年6月5日、「規制改革に関する答申」を取りまとめた。この答申では、一般用医薬品の販売について、「インターネット等ですべての一般用医薬品の販売を可能とし、これらの制度的枠組みを遅くとも2013年9月までに整える」と結論づけた。

    また、安倍晋三内閣総理大臣は、同日の「成長戦略第3弾」のスピーチにおいて、「消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で、すべての一般医薬品の販売を解禁いたします」と発言。この「すべての一般医薬品」という表現が、後々の厚労省と官邸のせめぎ合いの橋頭堡となった。

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