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薬価引き下げの診療報酬への振り替えは「フィクション」か?─財政審「建議」の検証[深層を読む・真相を解く(30)]

No.4687 (2014年02月22日発行) P.97

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2014-02-22

最終更新日: 2017-09-14

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  • 2014年度診療報酬改定の「全体(ネット)改定率」は名目+0.1%とされていますが、消費税引き上げ対応分を除くと実質-1.26%で6年ぶりのマイナス改定となりました。これは介護報酬が消費税引き上げに対応して0.63%引き上げられたのと対照的です。

    このマイナス改定の理論的根拠とされたのが、財務省・財政制度等審議会「平成26年度予算の編成等に関する建議」(2013年11月29日)です。「建議」は、薬価基準の引き下げは「市場実勢価格を上回る過大要求」の「当然の時点修正」にすぎず、それを財源として「診療報酬本体部分を含む他の経費に使い回すこと」や「ネット改定率の概念」は「フィクション」であり「理屈としても成り立たない」と全否定しました。

    しかし厚生労働省も日本医師会もこれに正面から反論していません。私も、薬価引き下げ分の診療報酬への振り替えが生まれた経緯は知らなかったので、国会の会議録等を調べました。その結果、この振り替えは1972年の中医協建議で初めて提案され、厚生大臣や首相も公式にそれの尊重を約束した結果、慣行として前回改定まで踏襲されてきたこと、財政制度等審議会も昨年5月の建議まではそれを容認してきたことが分かりました。

    中医協の1972年「建議」が原点

    現在では、薬価と診療報酬の改定は同時に行うのが通例ですが、中医協が発足した1950年から1970年までは、両者は別個に行われるのが一般的でした(医薬情報研究所「診療報酬・薬価改定経緯一覧」参照)。

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