厚生労働省は7日、医薬品・医療機器13品目を対象に試行導入している費用対効果評価の結果に基づき、4月に計3品目の価格調整を行うと発表した。免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ、小野薬品工業)と難治性乳癌治療薬「カドサイラ」(同:トラスツズマブエムタンシン、中外製薬)については薬価の引下げを実施。一方、遠位弓部大動脈瘤に用いる「カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステム」(川澄化学工業)の材料価格は引き上げる。
費用対効果評価の試行的導入では、比較対照の治療よりもQALY(質調整生存年)を1単位多く得るのに必要な費用(増分費用効果比:ICER)が500万円を超える場合に価格を引き下げることとしている。
厚労省は13品目の評価結果を、7日に開かれた中央社会保険医療協議会の費用対効果評価、薬価、保険医療材料の3専門部会の合同部会に報告。それによると、オプジーボとカワスミNajutaについては、企業の分析結果と第三者の再分析結果に大きな乖離があったことから両結果を併記。価格変動幅がより少なくなるほうの結果を採用して価格が調整された。カドサイラは、化学療法と比べてQALYを1単位多く得るのに1000万円以上必要であることが示され、引下げが決まった。
なお、両分析結果が併記された品目の価格については、検証分析を行った上で最終調整される。
厚労省は今後、試行導入で明らかになった技術的課題への対応策を整理するとともに、本格導入(制度化)に向けた検討を進め、2018年度中に結論を得る方針。
難航が予想されるのは、費用対効果の総合的評価(アプレイザル)における評価基準の設定方法だ。これに関して、厚労省は昨年、中医協に「支払い意思額調査」実施の可否を諮ったが、死期が迫った「ある人」の余命を1年延ばせる高額治療を保険適用する場合に許容できる負担上限額を問う内容に、診療側委員が強く反発し、実施が見送られたという経緯がある。
同日の会合で、厚労省が改めて調査の実施も視野に検討する考えを示すと、診療側の松本純一委員(日本医師会)は「命に値段を付ける性格の調査には断固反対する」と表明。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会)は賛否には言及しなかったものの、「調査実施の可否は一番議論に時間がかかる。最優先で議論すべきだ」と主張した。