中医協は7月27日、高額薬剤への対応として薬価算定ルールなど薬価制度の抜本的見直しと適正使用を推進するガイドラインを策定する方針を決めた。見直しのポイントやガイドラインの方向性について解説する。
まず、オプジーボの薬価はなぜ高くなったのか。オプジーボの薬価は100mgで72万9849円(表)。類似薬がないためコストを積み上げて薬価を算定する原価計算方式が用いられた。総原価には原則10年で回収する前提で開発費などが計上。対象人数は悪性黒色腫のピーク時470人となっており、単純計算だが小野薬品工業が非小細胞肺がんで試算した1万5000人とは約32倍の開きがある。このように原価計算方式では市場規模が薬価を大きく左右する。
しかし、中医協の薬価算定組織における議論で、臨床試験の進捗など適応拡大につながるデータの提示義務はない。大幅な適応拡大の可能性があると認識されつつ、その視点は薬価に反映されない仕組みとなっている。現行ルールの不備の1つとして検討の余地はないか。
また、非小細胞肺がんの場合、用法・用量が悪性黒色腫と異なるため1日薬価は9万5046円に跳ね上がる。流通経費は薬価に一律の係数(14年度は6.8%)を掛けて算出するため、高薬価を招く一因となっており、妥当性の検証が必要だろう。
一方、営業利益率は画期的な効果が認められ、初の60%加算がついた。2年ごとの診療報酬改定で薬価財源が狙い撃ちのように引き剥がされる中、イノベーションの評価という観点から営業利益率への加算は当然、との見方もある。
薬価算定ルール見直しの主なポイントは、①期中改定の是非、②医薬品の特性をどう考慮するか―の2点。これまで薬価算定ルールは、市場規模が拡大した医薬品について市場拡大再算定(最大25%引下げ)、昨年は特例拡大再算定制度(同50%引下げ)を導入し、事後的に対応してきた。しかし、オプジーボが投げかけたのはスピードへの対応力。次期改定までにさらなる適応拡大の可能性が高く、類薬の承認も控える。この状況に対応するには“期中改定”導入が最も有効だろう。
安倍晋三首相は8月8日の経済財政諮問会議で期中改定検討の必要性に言及。「使われる対象が当初の予測と違って非常にたくさんになった場合」「効く薬効の対象が増えた場合」に「どういう対応をすべきか考えておく必要がある」と述べた。
対応策はここ数カ月の中医協における指摘を踏まえ、一旦今後の方向性について取りまとめたもの。目立った反響があったわけではないが、この時期に厚労省として対応策を提示したことについて、委員の先生方からも一定の評価をいただいたと思う。
現行のルールでは、薬価改定は改定前年の9月に薬価調査を行い、乖離率や市場規模などに基づき実施する。当初の販売予測から大幅に規模が拡大した場合には、市場拡大再算定ルールを適用して薬価を引き下げる。16年度改定ではさらなる引下げを行う特例拡大再算定も導入した。しかし、9月の調査に基づくため、10月以降に適応拡大などがあって大幅に市場規模が拡大したとしても、このルールの対象にならないという問題がある。
オプジーボも12月に効能効果の追加が承認されたので、16年度改定に間に合わなかった。再算定の対象とならず、市場規模が小さい前提で原価計算方式で算出された薬価が2年以上維持されることは合理性に欠けるのではないかとの指摘がある。薬剤費増加が問題視される中で、次期改定までこのままでいいというのは難しいかもしれない。
薬価制度が革新的医薬品の創出へのハードルになってはいけない。画期的なものには加算など一定のインセンティブが働く仕組みは継続する必要がある。ただ一方で青天井というわけにはいかないので、算定根拠が変わった場合には適切な対応が必要ではないか。
腎がんも近々効能効果に追加される。今後も他のがんに適応拡大される可能性があり、1260億円で収まらない可能性が高いことに留意する必要がある。
オプジーボを類似薬として薬価が算定されることになる。こうした状況に留意しておく必要がある。
運用については煮詰まっていない状況だが、18年度改定でどう使っていくのかを視野に検討していく必要がある。治癒するものであれば、少々高額でも将来的に見れば医療費の抑制につながるという考えもある。本格導入を意識した検討が必要だろう。
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