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治療薬の選択は現場の医師が決定すべき[お茶の水だより]

No.4684 (2014年02月01日発行) P.14

登録日: 2014-02-01

最終更新日: 2017-09-21

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▶“H1N1 flu epidemic fills up Texas hosp­i­tal beds and ERs”(1月16日付『Bio News Texas』)“California flu deaths continue to climb”(24日付『San Jose Mercury News』)米国で2009年以来2回目のAH1pdm09パンデミックが起きており、連日メディアがセンセーショナルに伝えている。CDCはAH1pdm 09に免疫のない18〜64歳の重症化について警報を出したが、米国では患者の多くが発症後1週間経って初めて医療機関を受診するのが実情。重症・死亡例の多くが発症後4〜5日で呼吸不全を呈し、ウイルス性だけでなく細菌性肺炎による重症化も見られるという。
一方、日本の5年前のAH1pdm09流行では患者の多くが発症2〜3日以内に医療機関を受診し、直ちに抗インフルエンザ薬による治療が行われるなど早期受診・診断・治療の体制が取られたため、重症・死亡例は極めて少なかった。ハイリスクである妊婦に対しても日本産科婦人科学会がノイラミニダーゼ阻害薬の治療を徹底し、予防投与まで勧告したため、死亡例ゼロという成果を挙げたことは国際的にも評価されている。これは、48時間以内の早期治療の有効性について医療提供側だけでなく、国民の多くが実際の経験から理解しているということが大きい。
今年も日本でインフルエンザが本格的な流行に入り、AH1pdm09の検出割合が最も多くなってきている。免疫のない5歳以下と20〜50代の間で流行し、重症化する危険があるが、例年通り早期受診・診断・治療の体制が取られれば、米国のような事態は避けることができるだろう。1月28日までに5道府県で報告されているタミフル耐性ウイルスについては、20例中15例は札幌での分離。菅谷憲夫氏(けいゆう病院)は「札幌ではまだインフルエンザの流行に入っていないが、散発例を積極的に分離し調査しているため見かけ上、耐性が増えている。流行が始まった後も耐性が残るかどうかが問題」と指摘する。
報道の影響で、「今年のインフルエンザは抗インフルエンザ薬が効かない」というイメージが国民に浸透する懸念がある。しかし、耐性ウイルスが少数例発生したという段階でタミフル等の使用を中止するのは「時期尚早」(菅谷氏)。治療薬の選択は、地域での耐性ウイルスの蔓延状況にも注意しながら、現場の医師が臨床データを基に決定すべきだ。

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