インフルエンザの流行期の発熱診療は、だいたいインフルエンザの暴露状況を確認して迅速抗原検査の実施を決め、あとは病歴と診察から風邪、インフルエンザ、特に高齢者で多い肺炎や尿路感染症などの細菌感染を見分けていくことになる。
発熱患者は非常に多いため、つい流れ作業でやってしまいそうになるが、その実、患者としてはいろいろな理由により受診することを“決断する”。それは前回肺炎だったから心配なのかもしれないし、インフルエンザだったら明日出勤や登校できない、咳が続いて寝られない、はたまた既にインフルエンザだろうと思っていて、早く治る治療や、家族に伝染したくないから予防の方法を教えて欲しいという方もいる。
この多様性をどう専攻医に教えたものかと思う。ヨーロッパのプライマリ・ケア外来の受診前後で行われた横断研究(Peltenburg M, et al:Ann Fam Med. 2004;2(6):534-40.)によると、5人に1人の割合で、診察後に患者自身が「なるほど、そうだったのか」と初めて気づく受診理由が浮かび上がったそうである。それは、症状の理由、診断づけ、身体に触れて診てもらうこと、不安や感情に対するケア、困難な時期に対する共感であった。逆に診察後に患者が「あれ、これはやってもらってないな」とモヤモヤしてくる項目は、検査結果、病気が今後どうなるか(予後)、そして現在の重症度についての説明であったという。
こうやって俯瞰してみると、“今どうなのか”は診察で満足してもらえるが、“やった検査を見せての丁寧な説明”と、“これからどうしたらいいのか”が抜けやすいのかもしれない。たくさんの発熱患者で忙しい、と一括りしがちでなかなか私も指導しきれていないから痛いところだが、患者が受診を決めたきっかけ、つまり期待と、診断を告げたあとのアフターケアについての説明はしっかりしておいたほうがいい、と教えてみようかなと思う。
吉田 伸(飯塚病院総合診療科)[総合診療指導医奮闘記②]