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【識者の眼】「コロナ以後は若い世代の街づくりのチャンス」馬見塚統子

No.5021 (2020年07月18日発行) P.59

馬見塚統子 (社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)

登録日: 2020-07-06

最終更新日: 2020-07-06

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新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で、あらゆる活動が自粛し、これまで地域包括ケアシステム構築の一つの要素であった、地域における生活支援=地域住民による支え合いの体制整備、第2層協議体の活動も一時中断してしまった。地域の住民の方々のやる気に着火することを担ってきた行政や社会福祉協議会、地域包括の生活支援コーディネーターには向かい風が吹く状況になってしまった。

しかし、このような大きな情勢の転換期には人々の価値や活動に変化が起きる可能性もあり、ピンチをチャンスに変えられたらと希望も持ちたい。

これまでの生活支援体制整備の課題は、地域の助け合い活動のアイデアや仕組みを協議していく住民の担い手に、圧倒的に生産年齢世代の参加が少ないことであった。現在の協議体の担い手の多くは、現役引退後や子育てが一段落ついた高齢期の住民である。活動の主はその世代に支えられることが大きいが、助け合いのある街づくりを構築する段階では、学生から経済活動を担っている第一線の年代まで、様々な世代のアイデアを取り入れることが重要だ。それにより、多様性を持った懐の深い街づくりを行うことができる。

コロナ禍で随分、宅配サービスのUber Eats(ウーバーイーツ)が活躍しているのを街中で見かけることが多くなったが、この仕組みを街づくりに生かすことはできないだろうか。例えば地域で生活する高齢者のちょっとしたニーズ「荷物を運んで欲しい」「スマホの操作を教えて欲しい」「一緒にご飯を食べて欲しい」「病院の受付をとっておいて欲しい」「犬の散歩をしてきて欲しい」をスマホで吸い上げて、近所の方たちの「今自分は手を貸せるよ」という意向を瞬時にマッチングして何かしらの対価をつければ、高齢者から若い世代までの助け合いを還流する仕組みをつくることができる。

子どもの時間と子育て期、高齢期はもともと土着性の強い時期であるが、このコロナ以後に若い世代が自分の住まいを起点としたローカルなコミュニティにとどまる時期は、コミュニティプラットフォームを整備するには大きなチャンスかもしれない。

馬見塚統子(社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)[生活支援体制整備]

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