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【識者の眼】「団体交渉への対応は慎重に!」川﨑 翔

No.5031 (2020年09月26日発行) P.62

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)

登録日: 2020-09-07

最終更新日: 2020-09-07

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クリニックを経営する上で、絶対に避けて通ることができないのが「労働問題」でしょう。医療技術の高度化に伴い、「ワンオペ」でクリニックを経営することは極めて困難であり、スタッフの雇用は必須です(ちなみに、弁護士は事務作業がほとんどなので、経費を抑えるために「ワンオペ」で法律事務所を経営している方もいます)。

「労働問題」の中でも特に対応が難しいのが、労働組合による団体交渉です。団体交渉(略して「団交」と言ったりします)とは、労働組合が使用者と対等な立場に立って、労働条件等について、使用者と交渉する行為を指します。裁判であれば、請求できる内容はある程度決まっていますし、裁判所の指揮により裁判期日が進められます。裁判上の和解ができなければ、良くも悪くも判決による解決が図られます。そのため、手続きの進め方で迷うことはないでしょう。

これに対して団体交渉の場合、手続きに明確なルールがあるわけではないので、具体的な対応はケースバイケースで、難しい側面があります。だからといって、団体交渉を拒否したり、団体交渉に応じながら誠実な対応をしないというのは極めて危険です。労働組合が労働委員会に対して救済申し立てを行い、「団体交渉に応ぜよ」などといった命令を出されてしまう可能性があります。労働組合の多くはツイッターなどのSNSで情報発信していますから、クリニック側の対応がSNS経由で拡散され、炎上するなどというケースもあります。したがって、団体交渉の申入書が届いたら、弁護士などの専門家に相談し、対応を慎重に検討していただきたいと思います。

また、昨今のコロナ禍の影響で、団体交渉が対面から電話会議やオンライン会議に変わるなど、これまでとは違った対応を求められることも増えています。以前、電話会議で団体交渉を行った際には、誰が発言しているのかを明確化させる必要があるなど、対面とは違ったやりにくさを感じました(ヒートアップしてくるとどうしても、「発言者が名乗ってから発言する」というルールがないがしろになりがちですし、同時に話すと聞き取れなくなってしまいます)。

安定したクリニック経営のためには、労働問題、特に団体交渉の申し入れがなされた場合の対応については、十分な注意が必要です。

川﨑 翔(よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)[クリニック経営と法務]

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