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【識者の眼】「保険診療は医師だけが行っているものではない」工藤弘志

No.5037 (2020年11月07日発行) P.62

工藤弘志 (順心病院サイバーナイフセンターセンター長)

登録日: 2020-10-28

最終更新日: 2020-10-28

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個別指導の中でも、新たに保険医療機関に指定された医療機関に対する新規個別指導は、特に重要であると私は思っていました。理由は、この指導は当該医療機関が保険医療機関として適切であるとお墨付きを与えるものとみなされかねないと考えたからです。そのため、事務方や非常勤の保険指導医の先生方には、特に慎重に指導するようにと伝えました。診療所への個別指導では10件のレセプトを中心に指導を行います。2〜3例に問題があれば、指導後の判定は「経過観察」となるでしょうが、半数近くの症例に問題があれば、このような医療機関が保険医療機関として適切であるとは言い難く、「再指導」により、保険診療上の問題が無くなったかを確認する必要があるでしょう。

私が指導医療官になって気づいたことは、保険診療は医療関係者、特に医師だけが行っているものではない、ということでした。もちろん、現在の保険診療システムに健康保険組合等の支払側が存在することはレセプトを作成するので承知していましたが、自分が考えている以上に支払側あるいは患者側が関与していました。保険者は医療費を支払う側ですので、このシステムに深く関与することは当然なのですが、医師側はともすれば医師の論理だけで診療を行おうとしがちです。これまでの連載で述べたように、医師が「口頭で説明しているのだから、これで算定要件を満たし、診療報酬を請求できるだろう」と言っても、その算定要件に「説明の要点を診療録に記載すること」が挙げられている場合、記載が無ければ算定できないのは当然だろうと支払側は思います。10件のうち半数近くの症例において診療内容あるいは診療報酬請求に問題がある医療機関をどうして保険医療機関と言えるのか、という意見が支払側から出るのも当然と思われます。私がこのように述べるのは、地方社会保険医療協議会(地医協)に出席したからです。

工藤弘志(順心病院サイバーナイフセンターセンター長)[保険診療雑感⑪]

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