No.5043 (2020年12月19日発行) P.52
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
登録日: 2020-12-08
最終更新日: 2020-12-08
前回11月19日に「安心して年末と正月を迎えるために」(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15932)と題して執筆をし、その中で、12月上旬に感染者の減少傾向が確認されない地域では接触機会を減らす追加対策が必要ではないか、という指摘をさせていただいた。
東京や大阪でも、指数関数的な感染者の増加は避けられるようにはなってきたが、重症患者数は積み上がっている。一方で、「短期集中」といいながらも、政府や自治体の介入は私の想定からするとかなり限定的であり、市民に判断が任されている。それでも繁華街への人流は減っているのは日本ならではであろうか。
こうしたなかで、年末に向けて感染者をもう一段減らすための対策の強化は必要と言わざるをえない。そもそも、年末は医療や介護のみならず、保健所も本来は休みであり、人員も手薄になる。コロナ対応に当たる人たちは既にかなり蓄積した疲弊があるため、いったん正月に少しだけでも休みを取れるようにして、1月以降のコロナ対応に力を温存したいところである。冬はこれからが本番であり、人と人との距離が近づくこの冬に、現在の日本の感染対策でどこまで押さえ込めるかはまだまだ楽観視できない。
年末はクリニックも休みとなり、検査ができるような民間の施設も検査数を増やせない可能性もある。そうした中で、感染がさらに拡大するような事態も想定される。正月明け、そして年明け1〜2週間してから感染拡大といった事態にも十分に備えをしておく必要がある。これは、これまで流行があまり見られていない地域の都市においても同様であり、こうした想定を社会や意思決定をする知事などとも共有する必要がある。
具体的な対策としては、流行が拡大してピークを超えていない地域においては、「家族や普段一緒にいる人以外との会食をクリスマスまで一時的に減らす」ということになるであろうか。こうした対策を行うなら年末を考慮すると今がラストチャンスであり、その効果をみながら、それでもだめならもう一段踏み込む対策も準備して、年末を迎える必要がある。
目先だけでなく、来年3月ぐらいまでを想定しながら、対策を考える必要もある。暖かくなれば感染が収まるという期待はまだできないが、少なくとも冬の寒い間は感染が広がりやすい傾向がある。
いろいろな限界が来るなかで、議論は必要ではあるが、とりあえず年末に向けた医療や介護、そして保健所の負担軽減については優先度を上げていただきたい。
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス対策]