株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「コロナ禍と個別指導」川﨑 翔

No.5106 (2022年03月05日発行) P.55

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)

登録日: 2022-02-25

最終更新日: 2022-02-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

先日、2020年度の個別指導の状況が厚生労働省のウェブサイトにアップされました。

コロナ禍の影響を受け、個別指導、新規個別指導ともに大幅に減少しています。具体的には、個別指導は前年比約3000件減少(約60%減)、新規個別指導は前年比約2800件減少(約50%減)となっています。厚生局が病院を訪問して行う適時調査に至っては、前年比99%減少の5件しか実施されていません。感染拡大が予断を許さないという状況が続く限り、今後もこの傾向は続くと思われます。

一方で、コロナ禍になり、個別指導でも新規個別指導でも、指導結果が「再指導」であったというご相談が増えています(次回の個別指導に備えてカルテの記載や診療体制などを整備したいという趣旨のご依頼ですね)。

あくまで想像ですが、厚生局としても少ない指導件数とリソースの中で、指導すべき事案をかなり絞っているのではないかと考えています。実際、ある地域の個別指導では、電子カルテの場合、カルテを紙媒体に出力したものとは別に、カルテの修正履歴も提出するよう求める運用になったと聞いています。

ここで気になるのは「カルテの記載はいつまでにすべきか(カルテの加筆修正はいつまで認められるか)」という点です。療養担当規則第22条では「保険医は、患者の診療を行つた場合には、遅滞なく、様式第一号又はこれに準ずる様式の診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない」と規定されています。時期に関するのは「遅滞なく」という部分ですね。

往診の場合、現場で詳細なカルテ記載をするのは難しいケースもあるでしょうから、簡単なメモをとって、クリニックに戻ってから追記するということも多いでしょう。また、クラークが記入した内容を担当医が修正して、内容を確定させるという場合もあるでしょう。

このように、加筆修正が一律に禁止されているわけではありません。特に電子カルテであれば、修正履歴が残りますから、いわゆる改ざんをすることはほぼ不可能です。ただし、内容が真実であったとしても、個別指導直前に記載を修正したということになると、厚生局が不正を疑う可能性もあり、クリニックにとって不利益になりかねません。

いずれにしても、カルテ記載の程度としては、「同じ診療科の医師がカルテだけを見て、当該患者に対して、過去どのように対応していたか、今後どう対応すべきかがわかる」というレベルが重要だと考えています。

川﨑 翔(よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)[クリニック経営と法務]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top