No.5132 (2022年09月03日発行) P.64
宮坂信之 (東京医科歯科大学名誉教授)
登録日: 2022-07-26
最終更新日: 2022-07-26
高カルシウム血症というと、まず副甲状腺機能亢進症、腫瘍随伴症候群、骨の病気などを考える。しかし、高齢者では、活性型ビタミンD3製剤を使っていないかどうかを確認する必要がある。
血清カルシウムは、血清ナトリウム、血清カリウムなどと比較してルーチンに測定することは少ない。血清カルシウム濃度の正常範囲は8.8〜10.4mg/dLである。カルシウムとリンの調節には、副甲状腺ホルモン(PTH)とビタミンDの血中濃度が大きく影響を及ぼすことは言うまでもない。
一方、日本は世界でも未曾有の高齢化社会である。1970年に高齢化社会(7%以上)に突入し、1994年には高齢社会(14%以上)、2007年には超高齢社会(21%以上)へと変遷している。今後も高齢者は増え、2025年には30%の大台を超えるとされる。
高齢者では骨粗鬆症の頻度が高くなり、安易に(?)活性型ビタミンD3製剤を使うことがいきおい多くなる。これには、アルファカルシドール(商品名:アルファロールⓇやワンアルファⓇなど)、カルシトリオール(商品名:ロカルトロールⓇ)、エルデカルシトール(商品名:エディロールⓇなど)がある。
血清カルシウムとリンの定期的モニタリングに落とし穴がある。つい定期的に測定することを忘れてしまいがちだ。しかし、活性型ビタミンD3製剤を使うときには、血清カルシウム値を定期的に測定し、基準値を超えないように投与量を調整することが、基本的注意として勧められている。
厄介なのは、高齢者が症状に乏しく、高カルシウム血症も例外ではないことである。重度の場合にはだるさ、疲労感、食欲不振、便秘などが現れるが、軽度では症状がないこともある。特に高齢者の場合は、いきなり情緒不安定、めまい、傾眠傾向、あるいは昏睡状態で救急外来を受診して緊急入院することがある。
ビタミンD3製剤は副作用が少ないとされるが、すべからく高齢者には注意である。
宮坂信之(東京医科歯科大学名誉教授)[活性型ビタミンD3製剤]