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【識者の眼】「諸外国における”かかりつけ医”のあり方」鈴木隆雄

No.5136 (2022年10月01日発行) P.60

鈴木隆雄 (Emergency Medical Centerシニア・メディカル・アドバイザー)

登録日: 2022-09-07

最終更新日: 2022-09-07

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かかりつけ医に関して、欧米の制度を引用する報道が目立つ。諸外国の病院は、多くが一般外来を併設していない。したがって、病院勤務の医師も指導医なら自身で医院を開業している。医院の診察で患者に入院が必要となると、患者の希望に合わせ公立(多くが教育病院)か私立病院へ手配する。病院でもその医師が主治医として病院のレジデントを指導しながら治療を行う。この地位をattendingと呼ぶ。病院から退院すれば、患者は再びこの医師を訪れる。外科系では、その医院で抜糸もする。

厚生労働省が進める病診連携は、上記のように病院に一般外来がないシステムを想定させる。緊急を別とすると、体の調子が悪くなれば、患者はまずプライマリケアの医師を訪問する。病状が重いとattendingである専門医が紹介され、病気が治癒するまでその専門医と付き合う。

教育病院では多くのattendingが集まり、教育に人的厚みが増す。attendingも教育に携わりより実力がつく。attendingは年配になると私立病院だけに勤務する人も多い。日本の報道は、病院の専門医と医院の開業医を区別して表現するが、上記のように諸外国はその構造がまったく異なる。

この違いは厚労省が進める専門医制度にも大きく関係している。専門医資格の維持に病院勤務が必要として麻酔科などはフリーランスの専門医が勤務医へと移動している。この混乱もattending制度の国では何の問題もない。要は病院勤務のみの医師はレジデントと研修医だけで、指導医の大半は医院と病院を兼任するattendingなのだ。

救急部門は一般的に公立病院が担い、私立病院は大学病院以外、原則関与しない。かつ病院はそれぞれが外科なら外科と単科で規模も大きい。コロナ禍において諸外国はattendingという指導医、すなわち開業医が奮闘したのである。一方、日本では勤務医の疲労だとか、コロナ病床が十分活用されていない等の報道があるが、その原因は個々の当事者よりも制度にあると思う。

因みに日本以外の民主国家の多くは、医療に貧富の差が存在する。attendingは公立、私立の両病院で働くが、収入の多くは私立病院から得ている。公的存在の教育病院は臨床研修を施行し、患者はそれに協力する見返りとして公的保険だけで利用できる。その協力を避けたい患者は私的保険を使い私立病院を利用する。医療制度を語るとき、森の中とともに外からの鳥瞰も必要である。

鈴木隆雄(Emergency Medical Center(イラク・アルビール)シニア・メディカル・アドバイザー)attending

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