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【識者の眼】「デジタルで本を読む」松﨑尊信

松﨑尊信 (国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)

登録日: 2024-11-11

最終更新日: 2024-11-11

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読書の秋。最近は製本された紙の本ではなくデジタルの本(電子書籍)も身近になりました。電子書籍は場所もとらず持ち運びも簡単なことから、読書のときに利用される先生も多いかもしれません。電子書籍のように、子どもたちが日常的に使用する教科書も、最近のデジタル化の進展によって、紙からデジタルに移行しようという流れがあります。

文部科学省は、2018年に学校教育法等を一部改正し、児童生徒の教育の充実を図るため、教育課程の一部において、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できる、としました。その基準を一部要約すると、「紙の教科書とデジタル教科書を適切に組み合わせた教育課程を編成し、児童生徒は紙の教科書も使用できるようにしながら、それぞれのコンピュータでデジタル教科書を使用する。学校は、児童生徒の学習及び健康の状況を把握するとともに、デジタル教科書を使用した指導方法の効果を把握してその改善に努めること」などとされています。そして時代は令和となり、文部科学省は、子ども1人に1台のデジタル端末環境と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するGIGAスクール構想を提唱し、政策を進めています。これによって、私たちは、特別な支援を必要とする子どもを含めて誰一人取り残すことなく、子どもたち一人ひとりに公正に個別最適化され、資質・能力が確実に育成できるような教育環境を実現することができる、という大きな効果が期待されています。

一方、最近の研究から、デジタル教科書については、プラスの面だけでなくマイナスの面も指摘されるようになっています。たとえば、あるレビューによると、デジタルと比較して、紙で読む場合のほうが、読者はより効率的に、作業能率を意識しながら学習している可能性がある、と報告されています1)。また、紙の本と比較すると、デジタルスクリーンでの読書中には認知負荷が大きくかかり、注意力・集中力が低下する可能性も指摘されています2)。私自身もともとアナログ人間ですので、経験的にデジタルより紙のほうが、紙の手触りなど文字以外の情報が頭に入り、集中して本や論文を読める気がしています。

時代の流れから、あらゆるものがデジタルに移行することは避けられないでしょう。しかし、子どもの成長・発達という長期に影響を与える可能性があるデジタル教科書については、メリットとデメリットを勘案し、拙速に進めることなく、慎重に進めて頂きたいと思います。

【文献】

1)Clinton V:J Res Read. 2019;42(2):288-324.

2)Zivan M, et al:PLoS One. 2023;18(5):e0283863.

松﨑尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)[デジタル][紙][教科書][学習][効果]

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