◆Vol.3 閉院時のカルテの処分 第二の人生のために、継承者があれば譲渡し、なければ閉院を考えております。当地に開業後28年になりますが、その間のカルテが大量に保管されています。カルテ(紙カルテ)の取り扱いに関しての留意点並びに、適切な処分方法は? |
カルテの【法定保存期間は5年】、しかし【損害賠償請求権は10年】を考慮した対応をお薦めします。また、保管場所・処分方法共に、個人情報保護の観点から細心の注意が求められます。 |
閉院の場合・継承の場合での扱いの違いや、保管・処分に関する留意点などをご紹介いたします。
1)カルテの管理責任は『開設者』『管理者』のどちらにあるか
医師法第24条第2項に「病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間(法定保存期間)これを保存しなければならない」とあることから、『開設者』ではなく『管理者』にあります。
なお、この場合の「管理者」は、医療法第10条にある「開設者の任命を受けた医師」となります。個人クリニックなどで開設者が臨床研修修了医師である場合は、都道府県知事の許可を得た場合を除き、開設者が管理者となることが規定(医療12条1項)。されていますので、一般的には、いわゆる院長がカルテの管理責任を有するとお考えください。
2)閉院時のカルテ管理責任(その1-継承の場合)
閉院後に別の医療機関に継承される場合は、厚労省のガイドラインQ&Aでは「カルテは継承後の医療機関へ引き継ぐことが可能になっていることから、引き継いだ先の医療機関の管理者にカルテ管理の義務が発生する」とあります。つまり変更と同時に管理責任も移行することになります。また、患者の個人情報の保護という観点においては、「合併その他の事由による事業の継承に伴って個人データが提供される場合」(個人情報保護法第23条第4項第2号)に該当し、患者の同意なくとも提供が可能とされています。ただし、患者側の心理としては、自動的に継承というよりは通達等により同意を得る方法がスムーズな継承に繋がると考えます。
3)閉院時のカルテ管理責任(その2-継承なしの閉院の場合)
閉院時の管理医師(院長)において、5年間の保管が義務となります。
ただし、患者の損害賠償請求権が10年であることを考慮に入れた場合、その期間は保管をお勧めします。併せて、加入中の医師賠償責任保険の特約(閉院後に保険加入期間中に発生した賠償責任案件について、一定期間補償が継続)についても確認することをお勧めします。閉院後に思わぬ訴訟に巻き込まれるなど、考えたくはないことですが、転ばぬ先の杖とお考えください。
4)閉院時のカルテ管理責任(その3-管理者死亡による閉院の場合)
カルテ管理責任自体は、遺族に引き継がれることありません。管理者医師死亡の時点でその管理責任は消滅します。厚労省通達(下記)により、管理者の医師がいない場合は行政機関で保存することが適当とされていますが、実際のところは遺族の方と自治体(管轄保健所)との相談により、どちらで保管するかが決められるようです。
【昭和47年8月1日医発第1113号厚生省医務局長通達】では、「通常は廃止時点における管理者において保存するのが適当であるとされが、管理者たる医師がいない場合には、行政機関において保存するのが適当である。」とされています。しかし、患者側からの損害賠償に関しては、管理者である医師が死亡した後も、損害賠償義務は死亡医師から遺族(相続人)へ受継ぐこととなるため、その請求権が10年であることを考えると、カルテは遺族が保管(10年)したほうがよい…という考え方が多いようです。
5)具体的なカルテの保存方法
◎電子カルテの場合
本体(ハードディスク)を買い取るか、再リースなど、リース会社と協議・選択し、手元にて保管する方法を検討します。外付けハードディスクにデータを移し保管、CDにデータを移し保管という方法もありますが、この場合、個別に患者のカルテを引き出す必要が生じた場合には、専用のソフトが必要となるので確認が必要です。
あるいは、外部業者設備にデータ保存を委託する方法あります。その場合は、厚生労働省、経済産業省、総務省による「3省4ガイドライン」を遵守する必要がありますので確認の上委託業者選びを行ってください。
◎紙カルテの場合
紙カルテそのものを保管します。十分な保管スペースを確保し、後日、検索・確認がしやすいように分り易く整理・保管することが大切です。
しかし、永年盛業されておられるクリニックの場合、保管カルテの容量もかなりのものとなることが予想されます。設置スペース不足など問題が考えられる場合は、民間保管業者に委託する方法もございます。保管箱に整理し依頼すれば、カルテを定められた期間保管し、その後確実に廃棄する業務を請け負っています。厚生労働省のガイドラインに準拠した保管体制により、保管倉庫の入退室管理のセキュリティも万全な体制で、必要な場合には指定されたカルテの保管箱を一時戻すなどの対応も可能な様です。
6)法定保存期間経過後の処分方法
保存期間(損害賠償請求権10年を考慮)経過後の処分でカルテを廃棄する方法としては、溶解、粉砕(シュレッダー)、焼却などがございます。機密文書処理業者に委託する場合は、個人情報の処理となりますので、十分な注意が必要です。
具体的には、集荷から処理まで同一またはグループ会社で確実に行われるか、作業完了証明書発行の有無、万一の場合の情報漏えい対策、情報セキュリティ認証ISO27001取得の有無などが業者選びのチェックポイントになります。
下記に参考までに一例をご紹介いたします。
ご興味のある方は、各業者へ直接お問合せ下さい。
◎ヤマト運輸株式会社
≪クロネコヤマトの機密文書リサイクルサービス≫(沖縄県を除く全国でご利用いただけます)
・集荷から溶解処理までヤマト運輸一社で安心輸送
・シュレッダーはもう不要!(※紙以外のものは混入できません)
・専用ダンボールに書類を入れていただくだけです
・未開封のまま溶解処理工場で溶解処理 溶解完了証明書も発行
・処理された資源は、リサイクルいたします
・万一の事故に備えた保険付き
・創業80周年。4,000社以上の取引実績
・機密文書抹消の専門工場で安全確実に処分いたします
・ファイル・バインダー等、そのままお預け可能で、情報抹消終了後に証明書が発行されます
・情報セキュリティ認証ISO27001取得企業
・万が一に備えて情報漏洩保険に加入しています
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