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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:指定感染症であることによる混乱の可能性」浅香正博

No.5004 (2020年03月21日発行) P.59

浅香正博 (北海道医療大学学長)

登録日: 2020-03-10

最終更新日: 2020-03-10

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中国の武漢で始まった新型コロナウイルス感染症は中国本土を越えてわが国や韓国にまで波及し、さらに全世界に広がりを見せている。医療従事者の一人として私もわが国での新型コロナウイルス感染の広がりを憂えている。この感染症は無症候性キャリアの存在が明らかになった時点できわめて予防しにくい感染症となった。さらに1月28日、政府が本感染症を「指定感染症」に指定したことにより、医療現場では季節性インフルエンザの診療よりはるかに煩雑なものとなっている。

この感染症の診断はPCR検査によって行われている。PCR検査は感度については良好であるが、鼻咽頭粘膜などの検体採取部にウイルスが存在しない場合、感度をいくら上げても陰性と出る可能性が大きい。そのため検査陽性の場合は感染ありと断定できるが、陰性の場合は信用ができない可能性がある。PCR検査を希望者全員に行うことは感染者の数を著しく増やすことにつながると考えられる。この場合、無症状や軽度の症状の人もまとめて新型コロナウイルス感染症と診断されるので、指定感染症である以上、原則的には入院隔離措置が執られることになる。そうすると、感染症指定医療機関ではない一般の医療施設でも入院させざるを得ない状況になり、逆に院内感染を拡大させる可能性が増してくる。いつの日か、本感染症を指定感染症から解除する時がやってくると思われるが、そうなってくれると通常のインフルエンザと同様に軽症の場合は自宅待機を勧めることが可能になり、医療における混乱が生じる可能性は減少する。

個人的な意見になるが、これからの1カ月間の感染の動向により新型コロナウイルス感染症への基本方針が大きく変わる可能性が高いと考えている。新規感染者より回復者の方が多くなれば指定感染症の枠から外し、季節性インフルエンザと同じ診療方針で行えばよい。新規感染者がなお回復者を大きく上回っているのであれば、感染ルート探索のために全力を挙げ、個別の調査により感染源を完璧に絶たなければいけない。結果が前者であってほしいと強く望んでいる。

浅香正博(北海道医療大学学長)[新型コロナウイルス感染症]

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