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【識者の眼】「家族の面会も不要不急?」佐藤敏信

No.5018 (2020年06月27日発行) P.59

佐藤敏信 (久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)

登録日: 2020-06-11

最終更新日: 2020-06-11

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新型コロナウイルス感染症に関連することも書いてみる。今やオンラインミーティング、花盛りだ。私自身もかなり古くからskypeユーザーだった。ただし、多くの日本人の感性には合わないのか、これまでは「オンラインミーティングでいかがでしょう?」と提案しても、やんわりと断られることが多かった。

母が独居になってからは積極的にskypeを活用した。厚生労働省在職中は頻繁に帰省するわけにもいかなかったので、母との電話を動画ありのskypeに変更した。当初は、使わなくなった小さなPCを実家に置き、それをRGBケーブルで大型のテレビに接続して大画面で見られるようにした。PCの電源を入れ放しにしておくことで、着信音が鳴ったら、テレビのリモコンの入力切替でRGBに切り替え、マウスで「応答」をクリックするだけでいいようにしておいた。と言っても、その時点でとうに80歳を過ぎていたので、マウスを使っての操作のコツを呑み込むのは簡単ではなかった。

そのうち、telyHDという、テレビに直結するだけでskypeに接続できる機器が登場した。専用機なので接続は非常に楽だった。うまく接続できれば母も顔が見えるということで喜ぶし、広角レンズだったので、表情はもちろん、部屋の中の様子もわかって、見守る側にとっても非常に安心だった。ところがskypeの親会社であるマイクロソフトの都合で突然接続ができなくなった。

そうこうしているうちに母は骨折で入院し、さらにサービス付き高齢者向け住宅に入居した。サ高住に入居してからのこの2年間は、福岡にいる限り、毎朝夕、たとえ15分でも見舞っていたのだが、新型コロナを理由に、面会が一切許されなくなった。

施設内でクラスターでも発生すればひとたまりもないので、この措置にも納得はできるが、一方で割り切れない気持ちがあるのも事実だ。家族と会えないということが高齢者の心理的な面に与える影響は大きいだろう。それにしても何らかの工夫は欲しい。アクリル板を立てた面会や、冒頭に書いたネット面会なども考えられるのではないか。残された余生がそれほど長くないことを思うと、この間の2カ月でさえとても貴重に思える。

佐藤敏信(久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)[新型コロナウイルス感染症]

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