No.5019 (2020年07月04日発行) P.67
工藤弘志 (順心病院サイバーナイフセンターセンター長)
登録日: 2020-06-16
最終更新日: 2020-06-16
保険診療について勉強した後に、医師国家試験を受け、合格した者が保険医になるという制度は誰が見ても一応納得するものではないでしょうか。
このように考えるには理由があります。仮に、私が試験を受けた1980年頃のシステムが現在も継続しているとすると、医者は一体いつ保険診療というものを理解したのかとマスコミに突っ込まれないか、ということです。もし、保険診療に関して学ぶ機会がないまま保険医になっていることが一般メディアに報道されれば、大きな社会問題になりかねません。現行の制度でも、医師は自己研鑽にて保険診療を理解してきたと弁明できるかもしれません。では真に理解しているかはどのようにしてチェックしているのかと問われた場合、審査支払機関による診療報酬のチェックでその機能を果たしていると言えないことはありませんが、それで十分なのかと問われれば、返答に窮するかもしれません。
繰り返しになりますが、やはり保険診療を勉強し、試験に合格したのだから保険医の資格があると示せば、明確な返答となります。ただ、その場合、いつ勉強するのか、どの成果をどのように評価するのかという点が問題になります。
文科省の管轄する医学部で学問しか教えないとすれば、学生は自分で保険診療を勉強するしかありません。私案ですが、厚労省は、保険診療の根幹をなす療養担当規則から国家試験の問題を何題か出すと明言すればいいのではないかと思っています。学生は23条からなる療養担当規則を理解すればよいのですから、受験勉強にはそれ程負担になることはないと思いますし、この範囲から出題される問題が、難易度が高い問題となることは考え難いでしょう。
保険診療を勉強し、試験に合格したので保険医となることに何の問題もないと思います。
工藤弘志(順心病院サイバーナイフセンターセンター長)[保険診療雑感⑦]