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【識者の眼】「コロナ禍の最前線に立つ看護師の大量辞職」倉原 優

No.5025 (2020年08月15日発行) P.57

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2020-07-31

最終更新日: 2020-07-31

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先日、ある大学病院で多数の看護師が辞職を希望したというニュースがSNSで話題になった。理由として、ボーナスが全額カットされそうになったことが挙げられている(その後報道を受けて、急遽支給する方針になった)。コロナ禍による減収が厳しく、財務体質がそこまでよくない大学病院では、当初の判断はやむを得なかったのかもしれない。

ここからは私見だが、そもそもボーナスというものは、労働意欲を高める作用もあるが、それにより企業の財務基盤が揺らいでしまっては元も子もない。銀行から融資を得てどうにかやりくりしているベンチャー企業などは、業績が悪ければボーナスがゼロになることだってある。そうしなければ企業が生き残っていけないからだ。通常の企業に照らし合わせるなら、個人的には有事の際の減給はやむを得ないと思っている。

しかし、コロナ禍の最前線に立っているのは、まぎれもなく看護師である。医師やリハビリスタッフや施設ICTも関わったと思うが、直接体に触れて看護をしたのは看護師たちだ。ここまでつらい思いをした職員のボーナスに手をかけるというのは、企業としては悪手であった。急遽支給する方針に転換したものの、働く側として悪いイメージの定着は避けられそうにない。

国内では、診療報酬も低い水準にあり、真綿で首を締められるように医療機関の財務は傷んでいる。たとえ新型コロナウイルス感染症患者の診療報酬をアップしたとしても、その他の収益源が壊滅的な状況にあることから、今後破綻する医療機関も出てくるだろう。国も既にいくつか手を打ってくれてはいるが、更なる援助に期待したいところである。

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]

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