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【識者の眼】「多職種連携を実際に行うための5つの要素」竹村洋典

No.5035 (2020年10月24日発行) P.53

竹村洋典 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授)

登録日: 2020-09-25

最終更新日: 2020-09-25

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多職種の医療、介護従事者が連携するのはいいことだ、と誰もが思う。しかし、それは各職種が仲良くする、という意味だけではない。多職種連携については近年、様々なエビデンスが出てきている(Haruta等)。筆者は多職種連携には以下のような要素があると考える。

1. 他の職種の仕事を知っている

看護師、薬剤師、歯科医師、栄養士、リハビリのOP・PT・ST、ケアマネなどなど、日ごろよく接している職種で、通常できること、いざとなったらできることを知っておくと、いざというとき都合がいい。また、それらができるために各職種がどんな教育や研修を受けてきたかも知っていると、想像しやすい。

2. 自分の職種のできる範囲を認識できる

例えば医師であっても、受けた研修などで自分のできる診療範囲は異なるであろう。それを認識すべきだし、またその診療を広げるためのさらなる生涯教育が必要かもしれない。

3. 全体の関係性の中で、どの部分が担当されていてどの部分が誰にも担当されていないのか、理解できる

地域で患者を診る場合、誰もケアすることがない部分が発生している場合がある。在宅医療ではしばしばあるのかもしれない。それを誰かが補えるか、議論できることが多職種連携で重要となる。例えば嚥下を歯科医師が、栄養を薬剤師が、リハビリの一部を看護師が、移送を近所の住民が、など、お互いに補う必要があるか、それを自分が実施できるのかを認識しなくてはならない。

4. 各々の職種と良好なコミュニケーションができる

各職種が職種間で、適時的に機能的にコミュニケーションを取れる必要がある。電話、対面、そしてどのようなことに気を付けてコミュニケーションをとるかである。

5. 多職種の連携が患者中心に企画運営されている

上記の多職種による連携によって患者のケアを話し合っていると、どうしても各々の職種にとって都合の良い議論、医療者・介護者中心になる可能性もある。患者中心にするために多職種ができることはないか、再考する必要がある場合もあるかもしれない。

したがって、多職種連携機能を促進するためには、これらの要素を教育・研修し、多職種の医療・介護従事者の機能を理解し、地域包括的に俯瞰的に患者のケアを把握できるようにする必要がある。また職種間のコミュニケーションが効果的にとれるようにするための学習も必要である。

【参考文献】

▶Haruta J, et al:J Interprof Care. 2018;32(4):436-43.

竹村洋典(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授)[総合診療]

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