No.5033 (2020年10月10日発行) P.57
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
登録日: 2020-10-01
最終更新日: 2020-10-01
なにもニューヨークまで行って、とは思うものの、以前、あのタイムズスクエアにあるMのロゴでおなじみのバーガーショップで、「テイクアウト」と言って店員にきょとんとされた。同行したバイリンガルの娘がすかさず「To Go」と言ってくれ、ようやく日本のものよりも品なく大きなバーガーにありつけた。その赤っ恥のおかげで、「お持ち帰り」は「To Go」と強烈に覚えることができた。大げさであるが、まさに生きた英語だ。
せっかく「To Go」を使いこなせることになったのに、今度は「Go To」である。あの感染拡大期の7月からのGo Toトラベルはいかがなものかと思ったが、いよいよ10月から東京にも拡大となった。観光業の裾野を考えれば、1兆3500億円の予算は地域振興のカンフル剤になることが期待されている。Go Toが、新型コロナウイルスのTo Go、「お持ち帰り」や「お持ち込み」につながらないことを祈りたい。
さらに、Go ToはGo Toイート、Go Toイベント、Go To商店街と続くという。こうなると「なんでもござれ」「早い者勝ち」感が出てくる。ならば、Go To健診を拡げるべきだ。3月ごろから6月あたりまで、特に緊急事態宣言下で健診は不要不急として、多くの健診医療機関は業務をストップさせた。また、健診受診者も医療機関への受診抑制と同様に健診を受けることをためらった。
承知のごとく、早期の癌や臓器の異常は、自覚・他覚症状ではまずチェックできない。不都合な症状が出るころには、進行している場合が多い。健診と治療成績についてはエビデンス有り・無しの両方の研究があるものの、早く見つけて早く治すことは国民にとっても、財政当局にとっても益となるに違いない。さらに、コロナ対応に加えて、受診患者数の回復に苦労し、疲弊する多くの医療機関にとって、健診者の増加は願ってもない経営支援となる。
まさに、Go To健診は、国民、財政、そして医療機関、すべてに益となる三方よしキャンペーンとなるように思われる。いかがだろうか?
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]