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【識者の眼】「東京2020オリンピック大会を迎えるにあたり、世界に思いを巡らす」和田耕治

No.5070 (2021年06月26日発行) P.57

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-06-15

最終更新日: 2021-06-15

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東京2020オリンピック大会(以下、大会)は、海外でも注目の高いイベントである。ワクチン接種が進み、季節的にも暖かくなった地域では感染拡大が落ち着きつつある。しかし、南半球では、南米やアフリカにおいて感染が拡大しつつある。ワクチン接種が十分に進んでいない国や地域がまだまだ多い。

観戦においてパブリックビューイング等、大勢でどこかに集まって応援をすると、それがきっかけで感染が広がるようなことは我が国だけでなく、他国でも同じである。そのため、海外で放送する際には、自国の応援において大勢で集まらないようにしていただく呼びかけを繰り返し行う必要があるであろう。日本での応援も、他国の模範となるような姿を見せる必要がある。

また、大会期間中の国内の感染を抑えることが求められる。世界中からメディアが訪問しており、日本の悪いところも世界に大きく報じる可能性がある。緊急事態宣言が再び発令されたり病床が逼迫した場合、日本は世界にどう発信するのかを考えておかなければならない。

感染を広げない応援の方法や仕組みも期待される。国内でも、観戦は自宅で、家族のような関係性のなかで、飲食をせずマスクをして小声で応援、を要請される可能性が高い。そうした中でも楽しめる、またはSNSなどを用いてつながる姿を日本は発信していくことが求められている。

コロナ禍で、外から日本がどう見えるか、について考えが及ばなくなっているのではないか。世界は今、日本に注目している。これはチャンスであるが、同時にピンチにもなりえる。世界は大会を通して改めて日本という国はどういう国かを知ることになる。 

世界の多くの国から見ると、日本はワクチンを国民全員分確保した国である。経済的にも恵まれている国である。その国民である私たちは、まだワクチンの接種が目の前に来ていない国の人々のことにも思いを巡らす必要がある。他国の人々がテレビなどの前に集まって応援することで、次第にその国の政府の言うことを聞かなくなり、パーティなどで集まる機会が増えて、感染が広がるようなことを想像できるようになる必要がある。

日本は模範を示さなければならない。そして、くれぐれも子供や孫の世代が海外の人からも尊敬されるような日本の姿を見せなければならない。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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