No.5106 (2022年03月05日発行) P.60
岩﨑康孝 (四谷いわさきクリニック院長)
登録日: 2022-02-08
最終更新日: 2022-02-08
前回(No.5102)に続き、第2回もシステムエンジニア(SE)について取り上げます。
この業界の第二の特徴は「残業」です。メンタルヘルスの現場で、この業界の方は残業が多いと感じます。
ご存じの方も多いと思いますが、2019年(平成31年)に施行された「働き方改革関連法」によりこの数年間は残業時間が劇的に減少しました。ところが、最近再び増えています。本来、月45時間を超える残業には厳しい規制がかかっているはずです。どういうわけか楽々と超えている方がたくさんいらっしゃいます。
統計でどうなっているか見てみましょう。残業時間は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」にあります1)。
「情報通信業」30人以上の事業所で15.5時間、2020年(令和2年)となっています。1日にならすと1時間未満です。大したことはないと見えるかもしれません。「医療福祉」で比較してみると、5.5時間となっています。「医療福祉」に比べ「情報通信」は約3倍です。確かに多いですね。医療や福祉の業界の残業状況を考えると、もしかしたら、この統計の「絶対値」自体は実態を反映していないかもしれません。あるいは、一部の方に負担が偏っているのかもしれません。
SEの方は、「予定通りに仕事が進まない」→「同僚や協力会社のスタッフが脱落する」→「1人あたりの業務量が増加する」→「残業時間が増える、休日出勤が増えて休息時間が不足する」→「抑うつ的になる」。そして、メンタルクリニックを受診なさいます。もちろん人間関係や家族の問題等を抱えていることもありますが、業務関連が圧倒的だと感じます。
SE業界の残業時間が長くなりがちな理由を、患者さんの話からまとめると次のようになります。①業務量見積もり:引き受けた際の見込み業務量と実際の業務量が違う。つまり、プロジェクト開始時点から必要なSEや期間が足りない。②技術水準:個人の技能評価が難しいため、引き受けた仕事をこなせないミスマッチが起きやすい。③人員補充:プロジェクトには経緯があるため、チームのメンバーが脱落すると、技術のあるSEが他にいても途中での戦力投入が困難である。
残業から見ると業界特性が均一なのでわかりやすいといえます。業界として各種手を打っているようではありますが、海外はどうしているのでしょうか。
次回は、「コールセンターの世界」についてお伝えします。
【文献】
1)毎月勤労統計調査.
岩﨑康孝(四谷いわさきクリニック院長)[メンタルヘルス][労働市場]