No.5118 (2022年05月28日発行) P.56
金城謙太郎 (帝京大学医学部総合診療科、帝京大学大学院公衆衛生学大学院教授)
登録日: 2022-04-19
最終更新日: 2022-04-19
近年の医師国家試験では、地域医療を担う医師が対応すべき高齢者、医療倫理、在宅医療、緩和ケア等の問題が出題されている。コロナ禍の少子超高齢社会では、地域医療を担う医師や、医療費増加に適切に対応して他の専門医と協働するプライマリ・ケアの存在が世界的にも重要とされる。2018年に総合診療科はプライマリ・ケアの専門科として19番目の基本領域となり、2021年に専門医が誕生し、多くの大学医学部に総合診療科が常設された。総合診療専門医は都市部から僻地まで、専門医や多職種と連携して内科、小児科、救急医療、コモンディジーズの初期対応と継続治療を外来・入院・在宅医療の現場で行い、地域に貢献できる能力を持つとされる。
現在、日本の大学医学部でのプライマリ・ケアの教育は、地域医療に携わる医師、欧米諸国でプライマリ・ケア教育を習得した医師、総合内科や他の専門医が携わる。乳児から高齢者まで幅広く診察可能な家庭医療専門医(2010年より日本プライマリ・ケア連合学会が育成)は大学で臨床研究等を行う一方、総合内科や内科出身医師は、総合診療科外来や在宅医療、救急医療、小児医療を実践し、講習会に参加して臨床能力を向上させている。プライマリ・ケア教育はそれらの教育者達のプロフェッショナルオートノミーにより支えられており、背景は違うが尊重し合い、地域の健康問題を解決する医療者を輩出している。
現時点で総合診療科専攻医プログラムを統括している日本専門医機構は、学会専門誌を持たず、定期学会は開催していない。そのため、サブスペシャルティ領域専門医を担う日本プライマリ・ケア連合学会や日本病院総合診療医学会、日本在宅医療連合学会等と連携しながら、日本のプライマリ・ケアを確立する事が望ましいと考える。
世界的にも、世界医学教育連盟(WFME)等の要件としてプライマリ・ケア教育が重要とされており、国が推進する在宅医療や地域医療構想、地域包括ケア等の地域医療を担う医師が身につけるべき知識・技能・態度を大学で教育すべきと考える。まだ創成期ではあるが、今後、日本の大学や教育機関で世界標準レベルの総合診療専門医が更に活躍し、地域医療に貢献する人材を輩出するよう尽力する所存である。
金城謙太郎(帝京大学医学部総合診療科、帝京大学大学院公衆衛生学大学院教授)[総合診療科専攻医プログラム]