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【識者の眼】「高齢者総合機能評価(CGA)とその活用」小川純人

No.5132 (2022年09月03日発行) P.60

小川純人 (東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授)

登録日: 2022-07-05

最終更新日: 2022-07-05

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高齢者医療やケアに際しては、医療と福祉サービスとの緊密な連携が不可欠である場合が少なくない。主治医意見書などの要介護認定に必要な書類を作成する時にも、高齢者の身体・認知機能等の客観的評価だけでなく、生活機能や福祉サービスに関する記載を行うなど、包括的かつ全人的な視点やアプローチが求められる。このように、疾患や障害を有する高齢者に対して、医学的、身体的、精神・心理的、社会的な評価や指標に基づいて、生活機能障害を総合的に評価する手法は高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)と呼ばれる。

CGAの歴史は古く、1935年に英国のウォーレン医師が高齢患者の医学的評価に加えて、ADL、情緒傾向、コミュニケーション能力などの評価を併せて老人施設入所や入院継続を判断したことから始まっている。CGAの際に用いられている実際的な指標項目としてADL、手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living:IADL)、認知機能、情緒傾向、抑うつ状態の有無、QOL、主観的幸福度、社会的環境などが挙げられる。また、CGAを導入、実施することによって、高齢者疾患や生活機能障害に伴う多彩な症候、症状、ニーズに対し、個別かつ適切に対応できるようになると考えられる。

わが国でもその有用性が見込まれ、特定疾患を有する40歳以上65歳未満、または65歳以上の新規入院患者に対し、基本的な日常生活能力、認知機能、意欲等について総合的な評価を行った上でその結果をふまえて入退院支援を行った場合、平成24年より総合評価加算(100点)として算定されるようになり、令和2年からは入退院支援加算にさらに総合機能評価加算(50点)が算定される流れになっている。

私たちも最近、CGAの実施と入院中死亡率低下やリハビリテーション・在宅支援導入との関連性やポリファーマシー是正の可能性を報告しており(Hosoi, Ogawa,et al:eClinicalMedicine 2020;23:100411)、今後関連ガイドラインの整備等も進められる予定である。超高齢社会を迎えたわが国において、こうしたCGAの更なる活用によって在宅、外来、入院、施設等におけるシームレスかつ包括的・全人的な診療・ケアの推進が期待される。

小川純人(東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授)[高齢者医療]

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