私は仲間の総合診療医やコミュニティナースとともに、2023年より「コミュニティドクターフェローシップ(コミドク)」を運営している。ここでは、コミドクの活動について紹介をしたい。
そもそもなぜ「フェローシップ」なのだろうか? それは、私自身が地域医療・地域活動についての学びに多くのハードルを感じていたからである。まず総合診療の研修では多領域のローテーションや病院・診療所での研修が求められるため、同一地域での継続的な地域活動が難しいことがある。また、医学モデルについても学ぶことが非常に多い中で、地域活動について数年の研修期間では深めきれないという課題も感じていた。そこで、専門研修を終えたあとのスペシャルインタレストを1つの位置づけとして、フェローシップとして学びのプログラムが必要と考えたのだ。
コミドクでは2023年に長野県軽井沢町と東京都北区の診療所・病院を拠点として活動を開始し、2024年にはさらに岐阜県美濃市、東京都町田市を拠点に迎えて、全国に活動を広げている。具体的な学びとしては、「医師の臨床と地域をつなぐ学問」としての家庭医療学を基盤としながら、コミュニティへの学びを「みる・はいる・つくる」の視点から深めている。
まず「みる」では、地域を様々な視点からみる方法の学びと実践をめざし、コミュニティアズパートナーモデル、フォトボイスを用いた地域診断を実践している。次に「はいる」では、地域の住民とフラットな関係性で関わり、地域にはいる方法として、コミュニティナースの「健康おせっかい」の活動から学習を深めている。最後に「つくる」では、地域コミュニティの人々と共創して活動をつくり、そのプロセスやアウトカムを発信することを学んでいる。具体的にはコミュニティデザインやアートプロジェクトの視点から、各々が関心を持つ地域プロジェクトを計画・実践・評価し、最後には発表としてアウトプットを行っている。
私たちがこのフェローシップで大事にしている要素に「共創」がある。これは医師と地域が、またスタッフとフェローが「共に創り上げていく」ことを意味している。医師が支援者として地域住民に一方向的なケアを施すのではなく、あるいは完成されたプログラムを学習者が単に享受するのではなく、相互に対等な関係性を築きながら発展させ、共に健康なまちを創っていくことを大切にしている。
コミドクでは、医療機関での診療も、地域での健康教室も、時には町で出会った住民と対話を重ねることも、広く地域住民の健康に関わる活動としてとらえている。まだ2年目のプログラムであり、日々スタッフやフェローが、関わる地域の人たちの暮らしを感じながら、変化し成長している最中である。地域医療の学びを深める1つのあり方として、コミドクの今後にもぜひ注目して頂けたらうれしい。
坂井雄貴(ほっちのロッヂの診療所院長)[フェローシップ][地域医療][コミュニティドクター]