バイオ医薬品の国際会議「Festival of Biologics 2024」が10月15〜17日の3日間、スイス・バーゼルで開催された。この会議は、最新のバイオ医薬品とバイオシミラー(バイオ後続品、以下「BS」)について、規制、開発、製造、臨床試験、患者アクセスなど多方面の情報交換が行われる場であると同時に、欧米のみならず中国や韓国の企業も展示し、研究や製造の技術革新を紹介している。この中でも、BSについては、サステナビリティをテーマとした多角的な議論が展開された。
BSサステナビリティは、2018年に世界的な医薬品市場調査会社が提唱した概念であるが、医療経済評価に関する国際学会である国際医薬経済・アウトカム研究学会(ISPOR)は、「BSサステナビリティとは、患者、医療関係者、メーカーなどすべての関係者のニーズを考慮した枠組みのもと、安全で高品質なバイオ医薬品への患者アクセスと医師の処方選択肢を改善し、既存の医療予算を適正に管理しつつ、適正な競争と安定供給を確保すること」と定義している。
BSサステナビリティに関する世界共通の課題として、開発規制の合理化、製造コスト低減のための技術革新、次世代BSの開発、BS使用促進のための制度的対応などが挙げられる。特にBS開発規制については、開発・製造技術や試験方法の急速な進展により、バイオ医薬品開発のスピードが上がり、BSのライフサイクルが短縮するリスクも高まっている(すなわち、BSが上市されても、より優れた次世代のイノベーターバイオ医薬品が発売され、旧世代のBSが使用されなくなる可能性がある)。そのため、開発コストの低減に加え、BSの開発スピード向上が求められており、欧米(EMA、FDA)ではBS開発規制の見直しが活発化している。さらに、陳腐化の市場リスクを低減するため、早期の使用促進を図る制度化も必要とされている。
一方、日本では国内でのBS開発が限定的であり、開発規制をはじめ、BSサステナビリティに関する議論も低調である。前回の本稿(No.5243)でも紹介したように、欧米では、先行バイオ医薬品とBS間の変更(スイッチ)ルールの明確化が使用促進の重要な論点の1つとされているが、日本におけるルール化の議論は緒についたばかりである。また、国際的なBSサステナビリティ議論では、使用促進の一方で価格下落が問題視されており、国内においてもBSの著しい薬価低下が日本市場の魅力度を下げている。結果として、撤退する製品や企業も出始め、BSの安定供給への信頼感が低下している。
日本の薬価改定は医療機関や薬局における市場実勢価に基づいており、必要以上に納入価が下がらないような流通の仕組みと薬価制度の整備、これに基づく安定供給の確保が課題である。また、BS使用が進んでいるとは言い難く、日本におけるBSサステナビリティの議論には、診療報酬制度を含めた使用促進策も含め、幅広い議論が求められる。
坂巻弘之(一般社団法人医薬政策企画P-Cubed代表理事、神奈川県立保健福祉大学シニアフェロー)[バイオシミラー]