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【識者の眼】「『人災』を防ぐための備えを」垣添忠生

No.4994 (2020年01月11日発行) P.56

垣添忠生 (日本対がん協会会長)

登録日: 2020-01-08

最終更新日: 2020-01-07

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自然災害が相次いでこの国を襲っている。一昨年の西日本豪雨、昨年の台風15号、19号の被害も然りだ。地球温暖化は続くから、今年も海水温の上昇から次々と強力な台風が発生するだろう。加えて、南海トラフ大地震は必ず起こると想定されているし、活火山の噴火も想定される。我々は自然災害の巣窟に居住している─といっても過言ではない。

しばしば「想定外」という言葉が使われるが、今後は想定外を前提に対処する必要がある。同時に、あらゆる自然災害は人災ともいえる。毎年起きる自然災害から、それらが必ず起きるものと予測し、過去の経験から未来に対する準備を進めることが求められている。

洪水、交通網の混乱、長期にわたる停電、医療機関を含む建物被害、逃げ遅れ、避難情報の不備、災害弱者の孤立などはなぜ起きたのか。過去の検証から浮び上がってくる問題点に基づき、「次」に備えた対策をとるのが、安全はもちろん費用対効果からも、最も効果的だろう。私が専門とするがん領域でも予防が何より大切だが、これは災害対策にも通じるはずだ。「備え」を怠ることは人災につながる。

長期的には数百万人の外国人を受け入れ、日本社会を支えてもらう必要がある。

短期的には、例えば新たな病院建設に際しては、病歴、CTやMRIといった医療情報や重機器を病院の1階や地下に配する、といった考え方を脱する必要があろう。人口減の現実から居住地域の集約化も避けられないだろうし、全国くまなくインフラの維持は難しくなる。

何かを失って新たなものを得る。「放てば手にみてり」という道元の800年以上前の禅の教えは今に生きているように想える。

少子高齢化と税収減があるからこそ未然の備えで社会コストを抑えるべき、と私は思う。

垣添忠生(日本対がん協会会長)[災害対策]

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