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【識者の眼】「人生会議は『死に方会議』ではない」川口篤也

No.5000 (2020年02月22日発行) P.10

川口篤也 (函館稜北病院総合診療科科長)

登録日: 2020-02-25

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厚生労働省は2018年11月に「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の愛称を「人生会議」に決定した。ACPについて同省は「人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み」と定義している。昨年11月に人生会議のポスター(下掲)が炎上して、1日で発送を取りやめたのは記憶に新しいだろう。複数の患者支援団体から内容に批判の声が上がり、SNS上でも賛否両論が巻き起こった。

それではあのポスターのどこが問題だったのか?

医療従事者に聞いてみると、どうして炎上したのかがあまりわからないという人がそれなりにいた。書かれている内容は大事なことだし、一般市民にも考えてもらいたい内容だというのがその多くの理由であった。一方批判の多くは、今癌などで治療を受けている患者や家族に「死」というものは恐ろしいものと連想させ、恐怖を煽っているなどの意見であった。確かに冷静に見てみても、病院に掲示はできないなと思う。厚労省の担当者は、若い層など、ふだんは関心がない人にも興味を持ってもらうためにあのような内容のポスターにしたようだ。皮肉にも今回の騒動のせいで「人生会議」という言葉自体は、無難なポスターを配付するよりも世間に周知されることとなった。

ただ私の危惧するところは、このポスターの文字を読んでもらうとわかるのであるが、人生会議というのは、「死ぬ前までに家族に大事なことを伝えておくこと」のみと捉えられないかということである。もちろんそれも大切であるが、人生会議の本質ではない。人生会議とは、人生の最終段階に限ったことではなく、普段から本人が大事にしていること、選好、価値観などを大切な人とたくさん話し合い、そして病気になったりいろいろなことが起こった際には、時に揺れながら一緒に悩み、本人、家族等が納得した選択をできるような話し合いを続けていくことである。決して「死に方会議」ではないのである。ただし、厚労省が「お笑い」に目をつけたのは個人的には賛成だ。死にも関係することに笑いとは不謹慎だと、それこそ炎上しそうだが、何かを広める際には恐怖よりも楽しさ、笑いなどの方が個人的には好きなので、次回はそのあたりをもう少し掘り下げてみたいと思う。

川口篤也(函館稜北病院総合診療科科長)[人生会議①]

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