「支出は少ない方がいい」という一般的原則に従えば、医療費が高くなることも、介護保険料が高くなることも、良くないことに見える。「健康で、介護が必要でない状態が長く続いた方が幸福だ」と「ピンピンコロリ論」も一般的には納得できる。しかし、人は誰でも最後は介護が必要な状態があって、この世を去っていかざるを得ない。
「死ぬ時くらい好きにさせてよ」の女優さんの言葉に皆がうなづいたように、「死ぬ時くらいは豊かに死なせてよ」と僕は思う。医薬品や医療材料など、商品市場でもある医療現場は、その商品のできや効果が顧客満足度に当然影響する。医療として「効果のない行為」や「効果が薄い商品」は当然、厳しく保険の対象から外すべきである。一方で、介護現場の「カネ」はほとんどが人件費である。「介護にお金がかかる」ということは「介護に手をかける」のだから、直線的には介護の質を上げることではないか。介護市場が大きくなることは「生活の質が上がること」である(自分でできることを奪って、やたら介護者がやってしまえとは言っていない。むしろ自立を助ける見守りの方がずっと手と時間がかかる)。
介護に関わる人の報酬を十分保証することと、若い人でも、中途でも介護に関わる人手を確保することができれば介護自体の質も確実に上がる。また、制度の運用をもっと緩めること(介護保険改悪反対!)で、「介護」の手前の(というか明解には区別できないが)やや虚弱になった方でも普通の社会生活を送ることをもっと助けることができるだろう。
高額な医療でごくわずかかもしれない時間的「生」に希望をつなぐのは選択としては全く自由であるが、もっと人生終盤の生活に金をかけませんか?そしてその「カネ」の負担は、もっともっと柔軟に分担すべきである。要は、金持ちはもっとお金を払ってくれて良いと思う。公的なサービスが充実すれば、富裕層が「自費サービス」に流れることも少なくなるだろう。
最後に、全国の介護職は圧倒的に不足している。論は別に譲るが、ぜひぜひ外国人に頭を下げて厚遇し、日本で介護に携わってもらうように運動すべきと考えている。
古屋 聡(山梨市立牧丘病院)[介護保険改悪反対!!]