No.5011 (2020年05月09日発行) P.47
東 憲太郎 (公益社団法人全国老人保健施設協会会長)
登録日: 2020-05-12
生活機能分類と言えば、世界保健機関(WHO)が提唱したものが一般的である。まずWHOは1980年にICIDH(機能障害、能力障害、社会的不利の国際分類)を提唱し、その後2001年にICF(国際生活機能分類)を新たに提唱した。ICIDHが障害の程度を分類したのに対し、ICFは障害があったとしても残存している能力について分類している。できない程度ではなく、できる程度を評価しているところが180度違うと言えよう。ICFは主として「身体機能及び構造」「活動」「参加」の3つの次元からなっている。
一方その生活機能を評価する試みは、かなり以前から行われてきた。一部の医療機関で用いられているBarthel Indexは、今から55年前に作られたもので、食事・移動等の10項目で構成され、全介助、部分介助(見守り)、自立と振り分けられる。当時は問題とされていなかったためか、認知症の評価項目はない。続いて42年前にはFIM(機能的自立度評価法)が作られた。これは食事等の運動項目13項目とコミュニケーション等の認知項目5項目からなり、いずれも1〜7点で振り分けられるが、かなり専門性が高い。実際には、リハビリ専門職しか使えず、そのため現在は主として回復期リハ病棟で使われている。また、介護の現場では、「日常生活機能評価表」がよく知られており、認知症の評価項目も入っているが、これまた、全介助、一部介助、介助なしと振り分けられる。そしてこの「一部介助」がかなりアバウトである。少し介助しても、ほとんど介助してもすべてここに含まれる。とても科学的で変化に鋭便な指標とは言えないが、介護保険の中ではこれが用いられている。
今まで医療の世界では、生活機能の評価が常に求められていた訳ではなく、疾病の治療が最優先で、生活機能が低下しても仕方がないという風潮があった。しかし今後は医療の分野でも、常に生活機能を意識した治療が行われるべきである。そして、医療・介護の一気通貫のデータ活用が求められている現在、生活機能の評価指標には、①ICFの概念に基づきかつ科学的であること、②状態の変化に鋭便であること、③医療職から介護職まで幅広い職種で使えること─が必要であると考える。
東 憲太郎(公益社団法人全国老人保健施設協会会長)[介護保険制度]