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【識者の眼】「脳卒中と新型コロナウイルス感染症(2)」峰松一夫

No.5015 (2020年06月06日発行) P.54

峰松一夫 (公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)

登録日: 2020-05-29

最終更新日: 2020-05-29

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言がやっと解除され、一旦危機を脱した(2020年5月末現在)。しかし、いずれ必ずおこるとされる第2波襲来に備える必要がある。最新情報をもとに、COVID-19パンデミック下の脳卒中について論ずる。

1)脳卒中とCOVID-19との因果関係

ニューヨーク市の医療機関で、COVID-19陽性の若年者(50歳未満)虚血性脳卒中5例が報告された。従来の7倍の発生頻度で、異常事態である。COVID-19陽性脳卒中は脳大血管閉塞や、凝固線溶亢進を示すD-dimer高値が多い。一方で、COVID-19による静脈血栓塞栓症リスクの増加や、これと突然死との関連が強調されている。COVID-19による若年者脳卒中の増加は、深部静脈血栓症の増加に起因する「奇異性脳塞栓症」の発生を反映しているのかもしれない。

2)急性期脳卒中患者の受診動向

COVID-19が猛威を振るった中国、欧米では、急性期脳卒中患者受診が激減したとの報告がある。脳卒中患者の受診控え、脳卒中医療供給体制の崩壊などが、その原因と想定される。国内でも、中核病院の一部が脳卒中診療の制限を行わざるを得なくなった時期がある(詳細は日本脳卒中学会が調査中)。

3)遠隔診療

前述の受診控えは、当初軽症患者(一過性脳虚血発作を含む)の重症化、再発増加を招くリスクがあり、患者の最終転帰を悪化させる。これを避ける方策として、一般市民向けの啓発(受診キャンペーン)、テレメディシン(遠隔診療)の導入・定着が必要であろう。

4)COVID-19対応脳卒中プロトコル(Protected Code Stroke,PCS)

COVID-19時代の脳卒中診療は、専門性、迅速性と同時に、「医療従事者の感染防御」も両立させなければならない。新しい脳卒中診療指針PCSが、各国で発表されている。わが国でも、日本脳卒中学会版が公表された。搬送患者がCOVID-19疑似症、または情報不明の場合、COVID-19未判定例として十分な感染防御態勢を敷いた上で急性期診療にあたるものである(https://www.jsts.gr.jp/news/pdf/jss_pcs_ver1_2.pdf)。

COVID-19と闘う世界各国と連携し、わが国を挙げての脳卒中診療改革が必要である。

峰松一夫(公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)[#脳卒中]

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