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【識者の眼】「総合診療専門医の資格審査への一考」草場鉄周

No.5046 (2021年01月09日発行) P.64

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2020-12-21

最終更新日: 2020-12-21

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日本専門医機構から総合診療専攻医向けの説明会が2020年9月に開催され、そこで2021年夏から秋に開催される予定の総合診療専門医資格審査の概要が示された。総合診療、内科、小児科、救急科それぞれに関連する筆記試験(多肢選択問題)と面接試験の2本立てである。面接試験の詳細は未定だが、提出する経験省察録(ポートフォリオ)に関する口頭試問の可能性が高い。他の基本領域の専門医資格審査と比べて、大きな相違はないと言える。

では、世界の総合診療専門医と同様の専門医資格審査は行われるのだろうか? 米国では多肢選択問題300問で合格率は90%弱、英国では多肢選択問題200問に加え、臨床実技試験が行われるのが特徴である。臨床実技試験は10分間の模擬診察を13ケースで実施し、マネジメント、問題解決技法、包括的な対応能力、患者中心のケア、診療態度に加えて身体診察などの臨床技能が幅広く評価される。また、13ケースには救急疾患、慢性疾患、小児ケア、婦人科ケア、メンタルヘルスなど幅広い領域が網羅されている。

他の国はおおむねこの2タイプのいずれかを選択している。臨床実技試験は実際の診療能力を評価するための妥当性が高い一方、診察ブース、模擬患者、試験官の確保など実施面でのハードルが高いのが問題となる。ただ、WONCA(世界家庭医機構)では、臨床実技試験による評価を推奨しており、世界でも採用する国が増えつつある。

日本プライマリ・ケア連合学会は旧プライマリ・ケア学会以来、この臨床実技試験を学会認定家庭医療専門医の資格審査のために20年以上運用してきた。私自身も2003年にこの試験を合格して専門医資格を取得した一人である。今はまだ難しいかもしれないが、いつの日か、総合診療専門医資格審査に臨床実技試験を組み込み、世界でも堂々と資格の質の高さを示せる日が来ることを期待したい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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