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【識者の眼】「『連携B水準』と地域の救急医療」小林利彦

No.5053 (2021年02月27日発行) P.60

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-02-03

最終更新日: 2021-02-03

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2024年4月から動き出す医師の時間外労働規制に関して、複数の医療機関で働く医師への対応が注目されている。厚生労働省の資料によれば、病院常勤勤務医の58.8%は勤務先以外での勤務を行っており、大学病院の常勤医師においては91.4%が複数の医療機関で働いている。また、主たる勤務先の大学病院だけで時間外の労働時間が960時間を超える医師が23.9%いるほか、兼業先での勤務時間を通算すると960時間以上となる医師も23.3%いることが分かっている。

副業・兼業を行う医師の時間外労働規制については様々な議論がなされてきたが、最終的には、従前からの「地域医療確保暫定特例水準(B水準)」とは別に、主たる勤務先以外での副業・兼業などを通じてB水準(時間外の労働時間が年間960時間以上、1860時間未満)となる医師には「連携B水準」という特別枠を設ける形で決着がついた。なお、連携B水準に相当する医師を抱える医療機関(主たる勤務先)では、通常のB水準と同様に、医師労働時間短縮計画の策定や評価機能による評価が必要となるが、該当する医師の兼業先での勤務実態把握と労働時間算定の厳格化も求められる。

その際、兼業先での宿日直許可の状況が問題となりやすく、改めて、2019年7月に発せられた労働基準局長通達「医師、看護師等の宿日直許可基準について」の解釈が重要になる。そもそも、医療法第16条における「医業を行う病院の管理者は病院に医師を宿直させなければならない」という規定と、労働基準法施行規則第23条による宿日直許可基準の現場解釈は、地域の中小規模の医療機関にとって悩ましい問題である。

実際、地方では、時間外の救急診療を救命救急センターや基幹病院の輪番制などでは対応しきれず、中小規模の病院が大学病院からの医師派遣(宿日直対応)のもと、時間外の受診患者を一定程度受け入れているという実態がある。しかし、今後は宿日直基準を厳格に定め、兼業先での労働時間を短縮させることで、従前どおりの医師派遣を継続させようとする医療機関も増えてくる気がする。結果的に、地域の救急医療体制が縮小していく地域も出てくることが予想される。地域住民として適切な受療行動が求められるのは当然だが、時間外でも重症患者は速やかに治療が受けられる医療提供体制の確保を地域レベルで議論する必要がある。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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