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【識者の眼】「大学病院における専門業務型裁量労働制の適用」小林利彦

No.5056 (2021年03月20日発行) P.59

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-03-04

最終更新日: 2021-03-04

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2024年4月から動き出す医師の時間外労働規制に関して、大学病院で勤務する医師への労務管理が注目されている。通常、大学病院で診療に従事する医師は教育職種(大学教員)と医療職種(病院医師)に分けられ、病院医師には正規・非正規の雇用形態がある。一方、大学教員には「教授・准教授・講師・助教」といった役職が付けられ、教育職種として週に1日程度の外勤が許されるほか、多くの医師が時間外の外勤等で生活費を補充している現実がある。主たる勤務先である大学病院と兼業先での勤務時間が通算960時間を超える医師に対して「連携B水準」という労働形態が新たに定められたところであるが、大学病院の多くは、今後も大学教員を「専門業務型裁量労働制」で管理対応しようとしている。

専門業務型裁量労働制(以下、裁量労働制)は労働基準法第38条の3に基づく制度であり、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として19業務を定めている。その中に、学校教育法に規定する「大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)」があり、大学の教授、准教授、講師(以下、教授等)の業務がそれにあたる。なお、大学の助教については、もっぱら人文科学・自然科学に関する研究の業務に従事すると判断できる際に裁量労働制の対象として取り扱うことが認められている。当然、裁量労働制の医師であっても客観的な労働時間管理が必要であり、使用者には休日・深夜労働の割増賃金の支払義務も生じるが、現状として十分な管理対応がなされているとは言えない。

現場的に何よりも問題なのは、大学講師または助教といった職位にありながら、早朝から深夜まで病院内で勤務している多くの医師(大学教員)を裁量労働制で労働契約することにある。学校教育法に規定する「主として研究に従事する」とは、業務の中心はあくまで研究であり、病院内業務は、教授等では1週の所定労働時間または法定労働時間のうち短いものの5割に満たないこと、助教については1割程度以下である場合と定めている。裁量労働制で雇用される大学教員が厳格に評価されていないことは問題である。そのような背景のもと、厚生労働省からは、大学病院での裁量労働制は「一般則」を適用し、自施設内での定期的な宿日直は不可(副業・兼業先での宿日直業務は可能)との周知が先日なされ、大学病院現場では更なる当惑が広がっている。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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