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【識者の眼】「日本の医療は国際標準ではない(2)」渡辺晋一

No.5066 (2021年05月29日発行) P.59

渡辺晋一 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2021-05-12

最終更新日: 2021-05-12

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前号(No.5065)の続きである。

8)不十分な医療体制:政府や一部のマスコミは、コロナ患者を受け入れない医療機関を非難するが、不必要な治療、検査、入院によって病院経営を賄うシステムを作ったのは、政府(厚労省)と医師会である。また米国では5年おきに医師免許の更新があるが、日本にはなく、厚労省や分科会の医師は、昔医師免許を得た人である。また日本の感染症関連学会の幹部の多くは抗菌薬の治験に携わった医師で、感染対策の訓練を十分受けていない。

9)感染対策の検証や反省、説明がない:政府やマスコミは感染拡大の原因を国民の自粛疲れや変異株のせいにしている。しかし自粛疲れの原因は、根拠が乏しい国民まかせの感染対策で、1年たっても感染者が減らないからである。また変異株は昨年に日本でも市中感染があることが分かっていた。政府は国民の健康と安全を守ると言うが、国民の命より政権の延命の方が大切のようである。

まだ字数に余裕があるので、以下に追加する。

最近厚労省で大勢の職員が会食をしていたことがわかったが、それはそのトップが少人数や昼の会食、マスク会食(マスクをして食事はできない!)を認めているからである。映画館などの休業要請より会食の禁止(黙食、個食は可)を早急にすべきである。

米国ではファウチNIAID所長が面前でトランプ大統領の感染対策に異議を唱えたが、日本の御用学者は黙っていることが多い。何しろ政府の専門家は20年以上前に医師国家試験に合格した人で、特に厚労省の技官は、医療行為をしなくても、天下り先は用意されている。

そもそも証拠に基づいた医療(evidence based medicine:EBM)はここ数十年前から提唱された医療の原則で、年配の医師は、その教育を受けていない。証拠というのは事実を客観的に評価して、そこから結論を導くものである。しかし一部の評論家は、科学的根拠がない持論を意見の相違と言い換え、また言い訳に使えるデータを切り取り、それを証拠があるとする。また日本にデータや証拠がないというが、海外には既に複数のデータがあり、それを科学的・客観的に解析・評価するのがEBMである。

新型コロナ感染症は、人流によって拡大し、主な感染経路は飛沫感染のため、会食の中止が必要である。さらに定期的なPCR検査で感染経路や無症状者を早く見つけるべきであるが、政府は何もしなかった。EBMに基づかない政策は、取り返しがつかないことになる。

渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]

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