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【識者の眼】「もし、オリパラのためにJ国のT市に選手を送るなら」和田耕治

No.5067 (2021年06月05日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-05-26

最終更新日: 2021-05-31

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東京オリパラでの感染対策を考えるにあたって、視点をちょっと変えてみる。あるアジアのJ国T市へ、我が国から選手を送ると想定して対策を考える。

まず大事なことは、我が国の選手が現地で感染しないことである。事前にワクチン接種をできるだけ多くの選手に行うが、接種ができない、または希望しない選手をどうするかが課題となる。ワクチンの効果を説明して接種をしてもらうようにするしかないであろう。選手にはワクチン接種の証明書を持たせる。

ボディコンタクトが多い競技では、相手はワクチン接種をしているのか、または検査をして陰性であることは確認できているのか、などの情報をどのように知らされるのだろうか。検査を毎日行うということであるが、試合相手が陽性者と分かる前に競技などで接触があれば濃厚接触者となる。その場合、その後の競技はできるのか、ワクチン接種をしていたらできるのか。選手が陽性と出た時、それは試合の相手に知らされるのか。相手の選手がそうした状態では競技をしたくないと申し出たら、試合の勝敗はどうなるのか。

ワクチン接種をした選手は、検査が免除されるのか、または仮に陽性と出た場合にはどうなるか、などのルールも確認したい。チームでの競技であれば、メンバーの1名でも陽性となった場合にどういう対応になるのか。

入国時には空港の検疫でPCR検査が行われるようだが、そこで陽性とでたら10日間隔離となるようだ。これを踏まえて早めに渡航の日程を組むのか、または直前まで自国で練習し、滞在は競技の間の短期間だけとした方がいいのか。

現地での医療体制はどうなっているのか。J国では医師法で医療行為が厳しく制限されているが、我が国のチームドクターは選手に対して医療行為が許されるのか。熱中症や怪我などへの対応はできているのか。

競技以外の場面での感染対策はできているのか。入国後の宿泊施設や移動などはどのようになるのか。国ごとに移動なのか、それともバスなどで他国の選手・関係者と移動するのか。

ワクチン接種をしている選手は多い。米国などではワクチン接種をしたらマスクをしなくて良いとする話もあるようだ。そうしたなかで選手村などの食事をする場所の感染対策は十分になされるのか。メディアや事業者そしてボランティアは十分に感染対策をしているのか。

こうした具体的な対応を聞きたいところである。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[東京五輪・パラリンピック][新型コロナウイルス感染症]

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