No.5068 (2021年06月12日発行) P.60
水野泰孝 (グローバルヘルスケアクリニック院長)
登録日: 2021-05-28
最終更新日: 2021-05-28
全世界で新型コロナウイルス感染者が存在する限り、インバウンドによるウイルスの持ち込みは常時考えなければならない。ワクチン接種が進行途上である以上、水際対策としてある程度効果が期待できる手法は入国前後の検査による感染状況の把握となる。2021年5月現在、厚生労働省は国籍を問わず出発国において出国前72時間以内に発行された検査証明書の提出1)を義務付けており、その提示ができない場合は検疫法に基づき日本への上陸が認められないことになっている。
検査が陽性であれば直ちに隔離対象となるが、陰性であった場合でも公共交通機関の不使用、自宅等での14日間の待機、位置情報の保存・提示、接触確認アプリの導入等について明記された誓約書を検疫所に提出しなければならない2)。この誓約事項を遵守するために、位置情報を提示するためのアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が求められ、健康監視のための連絡先等が確認される3)。
さらにインドではじめて確認された変異株B.1.617への水際対策として、厚生労働省が指定した国や地域(インド、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、モルディブ及びスリランカの6カ国)からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所が確保する宿泊施設で10日間待機し、入国後3日目、6日目、10日目に改めて検査を受けることになっている。
しかしながら日本は制約の多くが要請ベースであることから、待機期間中の外出などによる感染リスクを完全に抑え込むことが困難であり、指示に従わない入国者が1日最大300人に上った事実が明らかになるなど、日本の水際対策に関する課題と議論の余地は大きい。〈5月28日〉
【文献】
1)厚生労働省:検査証明書の提示について
[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00248.html]
2)厚生労働省:誓約書の提出について
[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00249.html]
3)厚生労働省:スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用について
[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00250.html]
水野泰孝(グローバルヘルスケアクリニック院長)[検疫]