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【識者の眼】「妊婦健康診査における助産所と医療機関の公費負担額の違いについて」中井祐一郎

No.5076 (2021年08月07日発行) P.60

中井祐一郎 (川崎医科大学産婦人科学1特任准教授)

登録日: 2021-07-12

最終更新日: 2021-07-12

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助産所と連携した妊婦健康診査を行っていると、個々の女性における心身の健康水準の高さに瞠目させられる。勿論、大きな合併症がないことも一因であろうが、助産師諸姉による時間をかけた妊婦健康診査の賜物だろう。私自身が行う健康診査でも生き辛さを抱え込んだ妊娠女性が多いので、それなりの時間をかけてはいるが、医療機関の外来担当医としては収入効率も考えざるを得ないので限界がある。

確かに、外来投薬を必要とする場合にはワンストップ性に欠けるという限界はあるものの、適宜超音波による評価も行われており、助産所における健康診査のクオリティは高いというほかない。当然、それだけの報酬も得ておられるのだろうと、公費負担額の上限を調べてみた。どうやら、医療機関と助産所ともに一回あたり5070円という世田谷区のように差を設けない自治体と、高知市のように医療機関7330円に対して助産所5060円と差がある自治体とがあるようだ。後者における差は2270円(31%)であって、助産所支持派の私としては看過し難いものの、助産所における上限額の絶対値としては東京都と同じともいえる。岡山県においても、岡山市や総社市などほとんどの自治体では両者ともに5760円と、助産所での妊婦健康診査は評価されている。一方、本学所在の倉敷市では医療機関5760円に対して助産院は3500円となっている。差は2250円と高知市とほぼ同じであるが、絶対額が低いが故に比率は拡大して40%強となる。

全国的な調査資料もなく、ウェブサイトでは不分明な自治体も多いことから、確かなことはいえないが、倉敷市のように助産所における妊婦健康診査を医療機関のそれよりも劣位に置くという考え方をしている自治体はほかにもあるかもしれない。このような考え方は、妊娠・分娩における必要以上の医療化のみを是とするのみならず、女性自身の選好を否定的に捉えるということにも通じかねず、政治行為としては非難に値するものではないだろうか。

中井祐一郎(川崎医科大学産婦人科学1特任准教授)[女性を診る]

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