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【識者の眼】「病院経営を考える①:見識と付和雷同」飯田修平

飯田修平 ((公財)東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)

登録日: 2025-07-28

最終更新日: 2025-07-22

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本欄の焦点は時事問題である。すべての運営主体・規模・種別・地域の医療機関が存続の危機に瀕している。「病院経営」を現象とともに、要因と対応について考えたい。

辞書では、「識者」とは、有識者、専門的な見識で意見や助言できる人。「見識」とは、物事に関する鋭い判断に基づいた、優れた考え・意見、と定義されている。

筆者には、三十有余年の病院経営に基づいた独自の観点・切り口(眼)を求められよう。

筆者に見識があるか否かと問われれば、回答しがたい。この用語が醸す(背筋が伸びる)雰囲気が好きであるが、気軽には使えない。他人に見識を問うことは、自分自身に問う(反問する)ことである。次の例を除いて、使った記憶がない。

某団体の某委員会で、某委員会の職掌に関する件の理事会案を、理事の委員が諮問した。筆者は「この事案の組織は、現時点は問題ではないが、関係を持たないほうがよい。公益性の大きい当団体では、将来、問題となる可能性が高い。社会通念上も問題である」と、ただ1人反対した。しかし、次回委員会で、当該案は理事会で承認されたと報告された。理事会決議事項とはいえ、団体として禍根を残すと考えた。そこで、委員の責務と考え、最後の手段として、「やはりこの決定に反対する。“見識”の問題である」と発言した。次々回委員会で、その提案は理事会が撤回したと報告され、安堵したことを想起した。内心ではおかしいと考えた役員が複数名いたことに、安堵したのである。

国、地域、組織、団体、職種、役割ごとに、文化、風土、習慣、価値観の相違があることは当然である。しかし、○○の常識は、××の非常識と言われるように、社会通念から、大きく外れて問題となる場合がときどきある。社会通念は急激には変わらないが、何も考えないと、いつの間にか社会の動向に遅れる。まして、近年のIT技術の急速な展開により、社会通念が従来よりも、急速に変わりつつある。気づかないのではなく、自分は、少しおかしい、変だなと感じても、邑意識というか、同調圧力に従う傾向がある。

自分の考えを堅持することは簡単ではない。筆者は、「自分で考え、実践する」を推奨している。基本(本質)は何かを考え、自分の考えを確立することが重要である。

同調圧力への対処法は、次の2点である。①自分の価値観や考え方を大切にし、周りの意見に流されず、自分の意見を持つ。②自分の意見や行動の理由を明確にし、周りの人にもわかりやすく説明する。

①に関しては、筆者の中学のときの校長が、訓辞のたびに「付和雷同するなかれ」と繰り返した意味が、独立自尊であると、後日、理解した。

②に関しては、本人はわかっているので、相手もわかるだろうと思い、丁寧に説明しない場合がある。相互に意味・意図を理解する必要がある。賛否は次の段階である。

経営者は孤独である。専門家、関係者の意見は聞くが、最終責任者である。

飯田修平(〔公財〕東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)[病院経営][社会通念

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