No.5084 (2021年10月02日発行) P.63
倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
登録日: 2021-09-08
最終更新日: 2021-09-08
政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が8月30日、インスタグラムのアカウントを開設したことが話題となった。春には、お笑いコンビEXITのりんたろー。さんと対談し、若者に対する新型コロナの情報訴求について議論していたことが記憶に新しい。
医療従事者がSNSで情報を発信することのメリットは、フォロワーが万単位のインフルエンサーになることで、適切な情報を届けることができる絶対数が増えることである。しかし、おそらくそれまでの道のりは長いだろう。
看護師や医師などの医療従事者が録画したビデオメッセージを、SNSを用いた広告キャンペーンの一環として多数に送信することで、人々の行動や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染に影響を与えるかどうかを、居住エリア別に推定した研究がある1)。クリスマスに大規模なキャンペーンを行ったところ、休暇中の旅行とそれに伴うCOVID-19感染の有意な減少につながったと報告されている(介入群で感染が3.5%減少、P=0.013)。
一方、SNSのデメリットはメリットと表裏一体で、フォロワーが多い医師がデマゴーグのインフルエンサーになってしまえば、社会に対して有害な影響を与えてしまうことになりかねないということである。
政府の重要な役職にある河野太郎大臣なども、SNSを使いこなしている。また、公式のSNSアカウントを立ち上げている学会も最近よく見かけるようになった。今回の尾身茂会長のように、こうした流れに柔軟に対応できるリーダーや組織が求められる時代なのかもしれない。
【文献】
1)Breza E, et al:Nat Med. 2021 Aug 19. doi:10.1038/s41591-021-01487-3.
倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]