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【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:進行期大腸癌」徳田安春

No.5084 (2021年10月02日発行) P.65

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2021-09-22

最終更新日: 2021-09-22

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今年9月21日に発表された横浜市立大等のデータによると、2017〜20年の間、新たに消化器癌と診断された患者5167人を調べたところ、コロナ流行が始まった2020年3月以降、その前の月と比べて月平均で大腸癌が27%減少していた1)。中でも早期での診断が減っており、大腸癌の進行度別では、早期のステージ0と1は33%減っていた。一方、進行したステージ3のケースは68%増えていた。胃癌も同様な傾向を示したが、大腸癌ほどの大きな変化ではなかった。食道や膵臓、肝臓、胆道のそれぞれのでは大きな変化はなかった。また、日本肺癌学会のデータでは、コロナによる受診控えで2020年の肺癌新規患者数が減ったとのデータを発表している。

このデータは、どの消化器に対して検診が有効であるかを意味する。コロナ流行期において検診受診数が大幅に減ったことがわかっている。これによってステージのより早いの発見が低下した種類のでは、検診が有効であったことを示唆するのだ。検診が有効となる要因として、もともとの罹患率が高いこと、早期発見のための検査が開発されていることだ。

日本を含む先進諸国では、大腸癌は罹患率が高く、近年増加している。食道や膵臓、肝臓、胆道のでは、検診では上部消化管内視鏡検査が食道癌の早期診断に用いられ、膵臓や肝臓、胆道のについては腹部超音波検査が用いられることが多い。これらの検査はしばしば無症状のを見つけることができるが、人口レベルで見ると罹患率がそれほど高くないので、検診受診数が減ったとしても大きな変化が出てこないと考えられる。

進行した大腸癌ケースの受診割合が増える中で、我々は日常診療でどうすべきか。それは大腸癌に対するhigh index of suspicion。危険な背景因子は45歳以上または大腸癌の家系だ。大腸癌は大腸内腔の狭窄と慢性出血が特徴である。の症状がある場合、早期に大腸内視鏡検査を考慮したほうがよい。

盲腸上行結腸のは、管腔径が大きく、内容物の水分が多いので、通過障害や排便習慣の変化をきたし難く、鉄欠乏性貧血のみを呈し、他の症状がまったくないことがある。ピットフォールは、皮膚筋炎、非誘発型静脈血栓症、リウマチ性多発筋痛症等の要因が大腸癌であることだ。

【文献】

1)Effects of the COVID-19 pandemic on the gastrointestinal cancer stage at diagnosis in Japan.

   [https://www.apdwkl2021.org/abstracts/effects-of-the-covid19-pandemic-on-the-gastrointestinal-cancer-stage-at-diagnosis-in-japan

徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

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