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【識者の眼】「電子聴診器への期待」土屋淳郎

No.5087 (2021年10月23日発行) P.58

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2021-10-12

最終更新日: 2021-10-12

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先日、聴診データ研究会で講演を行った。第1回セミナーは「COVID-19パンデミック下の聴診DX」をテーマに開催。第2回セミナーは今年9月に開催され、広島大学の大下慎一郎先生による「異常呼吸音の遠隔自動可視化システムの開発」の講演と共に、私はそのシステムを利用した実例について講演を行った。今年3月の日本医師会医療情報システム協議会(日医協)で講演した「オンライン診療システムを活用した新型コロナウイルス感染症対策の実際」から「電子聴診器」に焦点を当てたものであり、その利用が非常に有用であったという内容である。

普段用いている聴診器は私が生まれる前からその形態は大きく変わっていないが、近年ではこれをデジタル化する動きが見られている。主にチェストピースにマイクを設置し集音した聴診音をアンプにより増幅したり適切にエフェクトをかけたりノイズ除去をしたりしてイヤピースから聴取する。デジタル化することで聴診データをBluetooth等で転送することも可能となり、ヘッドフォンやスピーカーなどで聴取できるものもあれば、その音を解析することにより様々な肺雑音を解析し区別できるようなシステムもある。全体的な形態も変化しつつあり、チェストピースとイヤピースをつなぐゴム管が無いものや、聴診音等をスマートフォンに表示できるものもある。変わらなかった聴診器が「電子聴診器」として次の世代へ移り変わろうとしていると感じている。

私の講演では介護職が聴取した呼吸音を転送し自院で異常呼吸音の解析を行った事例を紹介したが、今後は医療者のみならず介護職員や患者・家族が電子聴診器を利用するケースも多くなるだろう。またデバイスの小型化や無線化によりオンラインでも使いやすくなり、既に開発されている肺雑音の解析以外にも心雑音や腸音などの解析も可能になり、これらが可視化できるようになればその利用シーンも増えてくるだろう。感染対策としても電子聴診器の利用は重要になりそうだ。

前述した日医協では同セッションに国立精神・神経医療研究センター神経研究所部長の本田学先生の講演があり、可聴域を超える高周波の音が脳機能に与える効果についての話が非常に興味深かった。今後は電子聴診器も可聴域を超える音を収集し解析することで今まで気づかなかった発見や診断が(超音波検査とは別に)できるかもしれないなどと妄想しつつ、電子聴診器の研究や開発がさらに進むことを強く願っている。

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[医療機器]

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