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【識者の眼】「生体防御反応としての発熱と漢方治療の意義」並木隆雄

No.5091 (2021年11月20日発行) P.61

並木隆雄 (千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)

登録日: 2021-10-28

最終更新日: 2021-10-28

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新型コロナ感染症の症状として、発熱があります。学部学生に感冒の漢方薬の講義をするときは必ず、発熱の生体防御反応として意味を強調して、話をしています。

発熱するのは、体内に侵入したウイルスなどを捕捉した免疫細胞から出る内因性の発熱物質によるプロスタグランジンE2(PGE2)を介しての視床下部の体温調節中枢での反応です。体温調節中枢でシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)酵素活性を阻害することによりPGE2が合成されるのを抑制するのが非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の作用です。NSAIDsの使用の見直しは平成11年度に報告された厚労省の、「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:森島恒雄)での「インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について」の報告が契機となりました。平成13年には「インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について」(医薬品等安全対策部会における合意事項)が作成されました1)。現時点の見解は、小児ではインフルエンザでは、アセトアミノフェン以外のNSAIDsの解熱剤は慎重投与と考えます。

一方、漢方薬のいわゆる感冒を治療するのに用いる処方には、発熱を促進する生薬の麻黄(エフェドリン)や桂皮(シンナムアルデヒド)などが含まれるため、麻黄湯や葛根湯などの漢方薬はインフルエンザや感冒の早期改善には合目的と考えられます。実際、麻黄湯は抗インフルエンザウイルス薬のノイラミニダーゼと症状の改善度の同等性が報告されています2)。言うなれば、発熱自体のウイルス等を排除しようとする生体防御反応が働いている状態を臨床的により強化するのが漢方薬の効果と考えています。一方、解熱剤は有益性が勝ると考えられる場合には使用されます。最初からの使用や全例の投与は慎重に検討すべきと考えます。

いろいろな症状には、回復の促進や一種の生体防御反応という意味があると考えられます。ケガの時の痛みや傷んだものを食べた時の嘔吐・下痢などの症状にはそれぞれ安静の促進、毒物の速やかな排出という意味があります。ですので、症状をとるための薬物の一律の使用は、生体防御反応という意味を理解していない一般の患者には諸刃の刃になりえます。自覚症状の生体防御反応という意味を再度考え、患者にもその意味を伝える機会としたいものです。

【文献】

1)報道資料:インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について(2021年10月18日確認)

   [http//www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0530-4.htmlf

2)Nabeshima S, et al:J Infect Chemother. 2012;18(4):534-43.

並木隆雄(千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)[漢方][発熱]

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